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Episode2│頑張って手に入れた海外赴任。しかしまったく新しい制度ができて...【後編】

2019.06.17

赴任地:ロンドン│頑張って手に入れた海外赴任。しかしまったく新しい制度ができて...【前編】

株式会社フレックスコミュニケーション代表、プロコーチの播摩です。

前回(頑張って手に入れた海外赴任。しかしまったく新しい制度ができて...【前編】)に続き、後編を掲載します。

Episode2は、国内外に15拠点あるIT企業で働く女性マネジャーの堀越さんです。

仕事内容は営業で、赴任先はロンドン。駐在員になって現在3年目の堀越さんに、インターネットテレビ電話でお話を伺いました。

【前編はこちらをクリックしてください】 

支店になじめる人材とできない人材の違い

本郷くんにはまず営業のサポートをやってもらうことにしました。

しかし、私の指示を素直に受けようとしません。これには頭を抱えました。

取引先訪問時の資料印刷をお願いしたときには「こんな仕事を僕がやるんですか?」とあたかも「本社なら派遣社員がやっていた仕事をなぜここでは僕がやるのか」と言わんばかりです。

どこの支社も本社に比べると社員数は少ないです。すると一人の守備範囲は当然広くなくては回りません。プロジェクトの種類も日本のように幅広くあるわけではないので、選り好みできる状況ではないのです。

本郷くんは小さな仕事をさせると、雑用をさせられていると感じ、プライドが傷つくのか、途端に不機嫌になりました。管理職にしてみれば、支店の仕事を一通り覚えてもらうには、ミスの危険性の少ないタスクから任せていくしかないのです。

ひと月ほどたったときに「提案書を変更して」と指示したときは「時間かかりますけど」と返されました。「いまごろ変更ですか?時間かかってもよければやりますよ」と条件つきのイエスで返答されたのです。そのときは支店長が「本郷くん、『今頃変更して、急げと言ったってイヤだよ』と聞こえるよ。納期はいつなのか堀越さんに質問するか、他のタスクを鑑みて、いつまでにできるか自分から伝えられるようになりなさい」と叱責して、助け舟を出してくれました。

本郷くんは一事が万事なので、支店という小さな組織のなかで徐々に浮いていきました。

半年がたったころ、当初受け身だった三田くんは、小さな仕事でも嫌がらずこなし、支店全体の動きが見えるようになっていきました。初めて取引先へのプレゼンの一部を任せたときよい返事をもらえたので、それが自信になったようでした。もともと几帳面な性格で、頼んだことにはミスが少なかったので、徐々に責任の重いプロジェクトも任せられそうな予感がしました。

休日にはローカルスタッフと遊びに行ったり、日本人のコミュニティに参加したり、ローカルライフを楽しむこともできるようになっていました。人を能力や職位で差別していないことが、ローカルスタッフにも伝わったのだと思います。彼らは本社から来た日本人のマインドには敏感ですから。

本郷くんは、相変わらずでした。

あるとき取引先とちょっとしたミスでトラブルになり、担当のローカルスタッフと言い争いになりました。

ミスを全て周囲のせいだと主張するうえに「そもそもやりたい仕事じゃない」という本郷くん。「じゃあ、なぜきたの?」と感情的になるスタッフ。「私は選抜されてここに来たんですよ。がっかりしたな。支店がこんな仕事しかしていないなんて」と本郷くんは暴言を吐きました。立場をわきまえない本郷くんに支店長が「もう少し謙虚になったら」と諫めました。

その日、本郷くんに「大丈夫?元気だしてね」と声を掛けると、「すみません。今日早退させてください。頭が痛いんです」と帰宅してしまいました。

小さい組織の支店に求められること

本郷くんはストレス耐性が低かったのだと思います。当社は体と同じように社員のメンタルヘルスにも配慮しています。その日から病欠が続いたため通院するようにと伝えたところ、医師から帰国を勧められたため、最後は人事の判断で本社に帰任することになりました。

どこの企業でも、支店が欲しい人材と、赴任する人材の間には多少のギャップはあると思います。

しかし、当社の研修制度で送られてくる人材は、そのギャップが大きすぎて、初めて受け入れた私たちはずいぶん戸惑いました。そのなかで三田くんが馴染んでいけたのは、視野を広くもてたことだと思います。支店の成果に貢献できるならなんでもやる、という気概を自分の中で醸成できたようでした。一年という限られた時間で、組織人として自分を主体的に変えていけました。

本郷くんは、「この支店で自分の実力を試されている」とか「〇〇だけは成し遂げる」という意気込みや課題意識がないまま無為に時間を過ごしました。

これは海外に限らずどこで就労しても言えることですが、自立しているメンバーが相乗効果をうまくつくっていってこそのチームワークだと思います。そこでのコミュニケーションは重要です。少ない人員で仕事を回している支店ではなおさらです。そのなかで言葉や態度の拙さが原因で人柄そのものがメンバーとして受け入れられなければ、それはいくら有能でも組織への貢献になりません。

二人を受け入れましたが、結局三田くんだけが今後も支店に残ることになりました。一年目に築いた力をベースに、来期からは業績に寄与してくれると思います。

20代の半ばで海外赴任の切符を手にした彼らを、当初非常にうらやましく感じたものです。しかし私は、やはり本社での頑張りが認められたうえでロンドンに来てよかったのだと考えなおしました。もし私が20代で海外赴任を命ぜられたら、自己過信が進み、鼻持ちならない人間になってしまった気がします。仕事の本当の楽しさや協力し合う喜びは、本社で先輩に教えられました。あの時期があってよかったです。

フレックスコミュニケーション 

海外赴任者コーチングコーディネーター播摩からひとこと

今回のテーマとなった海外赴任の制度を導入する企業が増えています。比較的新しい制度ですから、本社の人事は海外の現場に積極的にリスニングして、現場にとっても赴任する若年者にとっても充実した制度に改善していく必要があると感じます。

企業にありがちな「制度をつくるところで終わっている」ということでは現場が疲弊し、人材の本質的な成長につながらないのではないでしょうか。

荒波にもまれるには、それなりの体力をつけてから出なければ飲み込まれる人が出てきます。そして、支店では救助に当たる余裕のある人員はそれほど多くはないのです。

【こちらのコンテンツもご覧ください】

リンク:Episode1│飲食業マネジャーが、日本式マネジメントを諦めた日【前編】

リンク:Episode1│飲食業マネジャーが、日本式マネジメントを諦めた日【後編】

リンク:Episode2│頑張って手に入れた海外赴任。しかしまったく新しい制度ができて...【前編】

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