赴任地:シンガポール│妊婦や子供にやさしい街、シンガポール【前編】
株式会社フレックスコミュニケーション代表、プロコーチの播摩です。
前回(Episode4│日給100円の差でワーカーが姿を消す工場【前編】)に引き続き、海外赴任者の体験談を掲載します。
Episode5の今回は、シンガポールの金融会社の事務処理センターで働く32歳の女性、小山さん。
業務内容は入出金処理です。
シンガポールに住んで丸5年。2年前に長女を出産しました。今は、育休を終え、職場に復帰されています。
一時帰国されたときに東京のホテルラウンジでお話を伺いました。
里帰り出産は日本独特の文化
出産場所についてですか?
いいえ。あまり迷いませんでした。
海外赴任の夫についてきている専業主婦の奥さまなら日本での里帰り出産も選択肢にあると思いますが、シンガポールで就労している私は、この国で産もうと決めました。
実は里帰り出産は、世界中を見ても珍しく、日本独特の文化と言えそうです。
私は育児を、夫婦を軸に考えたかったのです。出産、子育てで夫が蚊帳の外なのはちょっと違うなと思いました。里帰り出産をすれば1か月ほどで家に母子ともに帰りますね。するとその時点で妻のほうが育児に手馴れています。おむつ替えも沐浴も経験を積んでいる。その結果、夫はどうしてもサポートに回りがちです。
ですから、父親も主体的に育児をしようという意識をもつためには、スタートのところがとても重要なんだと考えました。母親は授乳するので自然と絆ができますが、父親の絆って環境によって左右されると思うんです。二人でやろうとなると、そりゃあ夜泣きで寝不足になることもあるし、何もかも初めてで、てんてこ舞いになります。
でも新生児の子育てに二人のこととして関わることで、家族の絆を築いてきたいと思いました。里帰り出産が悪いとは思いませんが、親に頼ることを前提に子育てをスタートすることも、私たち夫婦は選びたくなかったのです。実際に子育てをするのは祖父母ではなく私たち夫婦ですから。
シンガポールは、欧米に比べて子供にやさしい土地柄です。私の感覚だと、特にインド系の人は子供に優しいです。妊娠中電車で通勤していましたが、必ず誰かが嫌な顔ひとつせず席を譲ってくれるのです。車内が混雑していて、優先席の人が気づかなかったときは、近くに立っていた人が優先席の人に声をかけてくれることもありました。
日本だったらどうでしょうね。
そんなおせっかいをするのは勇気がいりますよね。私も「この女性は妊婦さんなので、譲ってあげてください」とは言えないです。でも、シンガポールではそれに対する周囲の過剰な反応もなくて、みな受け入れていました。
産後ケアの文化
さて出産についてですが、シンガポールでは無痛分娩が一般的で、ほとんどの病院で選択が可能です。日本では「お腹を痛めた子」という表現があるように、痛みのつらさを耐えることを美徳とする文化がありますから、無痛分娩に罪悪感をもつ女性も多いと聞きます。こちらでは、痛いことを好き好んで行なう必要がない、と考える人が多いですね。
シンガポールは 医療水準が高いです。私は、日本語を話せるドクターに検診から出産までお世話になりました。産婦人科医は自分のクリニックには分娩設備をもたず、提携先の大病院で分娩するというシステムです。日本人の助産師さんもいる病院だったので、心強かったです。
産後の入院は、無痛分娩だと2日という短さです。無痛分娩は体の負担も少ないのです。
家に早く戻れるのは、産後のサービスがとても充実していることも要因の一つですね。産褥シッターさん、産褥マッサージ、パートタイムのメイドさん、産褥食のデリバリーなど、豊富なメニューから選ぶことができます。産褥期専門のシッターさんに私たちは2か月お世話になりました。シッターさんは、新生児の扱いに長けていて、産褥期に合わせた漢方料理が作れる、というのが特徴です。
通いと住み込みがあり、住み込みの場合は 夜も子供の世話をお願いすることが可能です。私は、通いで、日曜日を除く毎日9時から18時まで来てもらいました。新生児の世話、毎日の洗濯、夫の分も含めた料理、買い物、簡単な掃除を頼めます。沐浴の仕方や、オムツ替えのコツなども教えてもらえます。ただ、彼女は中華系シンガポリアンで、とにかくよくしゃべる人でした。産後は眠いので、彼女の話を聞くのはちょっとつらかったですね。まぁ、トータルでみるととても助かりました。
また、利用してよかったものは産褥マッサージです。退院後7日間連続で、自宅にマッサージに来てくれるのです。こちらでは、母体の回復手段の一つとして一般的ですが、日本にもあるといいですね。つま先から頭まで部位によってオイルやジンジャークリームをつかい、1時間かけて身体の疲れを癒してくれます。マッサージ後に布を巻いて骨盤を締めることで、腰周りもすっきりしました。
おっぱいマッサージも頼めばしてもらえます。乳腺炎の予防にもなりますし、母乳の出も良くなるそうです。なにより慣れない育児続きのなか、1日にほんの1時間でもリラックスタイムがもてることは最高の贅沢です。料金は1時間80ドルで毎回約束の時間に遅れることなく来てくれました。
産褥シッターさんにお願いしていたのは2カ月ですが、そのあとはパートタイムのヘルパーさんに週1回3時間来てもらって、掃除、アイロンがけ、ベッドリネンの洗濯と交換を行なってもらいました。
娘には、日本にいる親戚に会わせることがなかなかできませんし、私たちも頼れませんが、その分、こちらの人に助けられて子育てをしているので、娘は大勢の大人たちに見守られながら育っていると感じます。
日本にいたころの私は、「自分は自力でできる」と抱え込むところがありました。でも、今はできることはアウトソーシングしているので、娘に対してゆったりと向き合うことができます。シンガポールは、もともとシッターやメイドを雇うことが普通という空気があるのです。咎められることはありません。私の気分を緩やかにしてくれるのは、この国だからなのかもしれませんね。最初から自分達の家で、夫も一緒に子育てを出来たことがとてもよかったですし、シンガポールはそれには最適の環境ですね(後編に続く)。

海外赴任者対象コーチングとは?
海外赴任が決まったら、まず何を行ないますか?
各種手続き、子供の教育機関の手配、自分の健康管理、赴任地の文化の勉強などに時間をとられている間に、あっという間に出発日になってしまうことは多いのです。そんな赴任者は「出発日になっても実感がない」「向こうに行ってから成果を上げられるか心配」などと言います。
それは
「何を求められて赴任するのか」
「本社とのコミュニケーションはどうしたらいいのか」
「帰任までにどういう成果をあげたらいいのか」
など業務上の不明確な点を抱えたまま旅立ってしまうことに原因があります。
生き馬の目を抜く海外市場で、「日本人は、着任後3ヶ月以上仕事をしない。あいさつ回りで無為に時間を費やす」という評価があります。単なる交代要員として気楽に赴任するために、海外市場の中で競合に遅れをとっているのです。
同様に、数年間、目標なく駐在してきたために、「帰任時」にウツに見舞われている人も増えています。
在任中目立った成果を出せず、日本国内の事情に疎くなっていることが原因の1つです。
これらの問題を解消し、海外在任中に成果を出し、帰任後も充実した業務を継続するために
プロコーチがサポートをするのが「海外赴任者対象コーチング」です。
※上記画像をクリックすると詳細な内容がご覧いただけます
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