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Episode5│妊婦や子供にやさしい街、シンガポール【後編】

2019.11.04

赴任地:シンガポール│妊婦や子供にやさしい街、シンガポール【前編】

株式会社フレックスコミュニケーション代表、プロコーチの播摩です。

前回(Episode5│妊婦や子供にやさしい街、シンガポール【前編】)に引き続き、海外赴任者の体験談を掲載します。

Episode5の今回は、シンガポールの金融会社の事務処理センターで働く32歳の女性、小山さん。

業務内容は入出金処理です。

シンガポールに住んで丸5年。2年前に長女を出産しました。今は、育休を終え、職場に復帰されています。

一時帰国されたときに東京のホテルラウンジでお話を伺いました。

豊富な教育メニューを選べる

シンガポールでの出産費用は、とにかく高いんです。

外国人の場合、出産には140万円ほど請求されます。検診も、毎回2万円から4万円払っていました。私は今の金融会社が、一部検査費などを除いて負担してくれましたが、それはそれぞれの企業の規定次第だと思います。シンガポール国民であれば、一般的に産前産後合わせて4か月の産休があります。皆さんだいたいギリギリまで働いて、産後に有給休暇をプラスして長く産休を取るんです。

私は、1年の育休をとって、今はフルタイムで復帰しています。

保育園は幼保一体で、日本のこども園にあたります。Half dayとFull timeのプランを用意している園が多く、Full timeの場合朝7時から夜7時が通常の託児時間です。Half dayでも月に10万円程度の料金になりますから、日本に比べると高額ですね。

我が家は、娘を保育園に朝から夕方まで預け、家事全般を住み込みメイドさんに頼む、というスタイルで生活しています。朝は夫が娘を送っていき、メイドさんには、夕方のお迎えと夕食の支度を頼んでいて、発熱時や保育園が休みのときにも面倒をみてもらっています。この国の託児の選択肢は豊富で、いろいろなメニューが用意されています。保育園、通いのベビーシッター、ベビーシッターの家に預けるケースなどです。いくつかを合わせて利用している人もいます。

夫はヘルパーさんに家事をアウトソースすることに大賛成、むしろ夫のほうが積極的でした。

そういったことに反対されるしがらみがないので、日本から離れて育児をしていて、気楽だなと感じます。日本なら「母親が子育てすべきだ」、「他人を家に入れるのはどうか」、「母親が家事をする姿を見せないのは、こどもに悪影響がある」といった声も聞こえてきそうですよね。

シンガポールでは共働き家庭が非常に多いのです。女性のエリートは男性よりも収入が上の人も多く、そんな女性には早期の復帰が奨励されています。ですから政府が子育て世代をサポートする制度も多いなと感じます。自国民のみをターゲットとしたものも多いですが。

国民でなくとも使える制度の一つがメイド雇用制度です。フィリピン、インドネシア、ミャンマーなどから来た非シンガポリアンのメイドを雇う優遇制度で、月5万~6万円ほどで雇うことができます。国民であれば一定の条件を満たすと、HDB(公団住宅)を安価で購入することもできます。そんな制度が、シンガポール国民の育児スタイルをつくっているのだと感じますね。

多民族国家の多様性が子育てにいい影響

そうですねぇ。

プライベート空間に他人が入ってくることには最初は抵抗がありました。

でも、産褥シッターさんやマッサージ、お掃除のメイドさん、リネン交換などをお願いするうちに、徐々に慣れていきました。ただ人間同士ですから、小さいストレスはありますね。原因は、何か頼んだときに顔も見ずにぞんざいに返事をされるなどの些細なことの積み重ねです。

彼女たちには、気持ちよく働いてほしいし、親しく話をしたいとも思います。でも、一方で距離感がなくなるとこちらの指示を軽んじるのじゃないか、という不安もあります。雇用主としてのメリハリは必要だと思うのですが、その兼ね合いは難しいです。ただ、同じ家にいるのですから、娘にとっても良い大人の手本となるように、ふるまってほしいほしいなと思います。

シンガポールは学歴社会なので、早期教育に対する意識も非常に高いです。こども園は生後2か月から入れ、1歳半からは毎日時間割があって、遊びながら勉強する仕組みになっています。まもなく2歳のうちの娘も、午前中は毎日30分ずつ中国語のクラス、午後は45分ずつ英語の時間があって、今は色や形、数字を少しずつ覚えています。

さらに娘が通う園には週2回、日本語のクラスもあって、日本の季節行事を体験できて助かっています。そのほかにも、図書館に連れて行ってくれるオプションや、外部の水泳教室に連れて行ってくれるオプション、ミュージカルクラスに参加するオプションなどもあります。

前編でも述べましたが私は、「ああしなきゃ、こうしなきゃ」と自分にmustを課すところがあり、20代のころにはそれが生きづらさの原因になることもありました。こうして離れて生活すると、日本人は、共通のルールを守ることにすごく拘っていると気づきます。日本で出産していたら私の子育ても、社会の風習や親の価値観、自分のこだわりに、気づかずに翻弄されていたかもしれません。

でも多民族国のなかにいて、「あたりまえ」と考えることが個々に違い、日本のように国民一律ではないと気づきます。今の生活のなかでは、モスク、教会、ヒンズー系のお寺が隣接しているエリアを通ったり、それぞれの民族の祭日を楽しんだりしています。旧正月はチャイナタウンへ、ヒンズー教の光の祭典ディーパバリにはリトルインディアへ出かけます。そんななかで、いろいろな価値観に自然と触れることができます。

そういったなかで、私もとても柔軟に構えられるようになりました。自分の「あたりまえ」に縛られて、勝手に窮屈になっている自分がいたということが分かったのです。家事と仕事でイライラして娘に影響があるのは本末転倒ですね。今はこの国で、窮屈から解放されていい子育てができていると思います。

フレックスコミュニケーション 

海外赴任者コーチングコーディネーター播摩からひとこと

小山さんとは品川でお目にかかりましたが「日本の電車に2歳の娘と乗る勇気がない」というひとことに衝撃を受けました。公共施設で子供を泣かせていたら、その母親は迷惑そうに見られますものね。

以前、トルコで育児をした友人が話してくれたのですが「トルコでは、バスのなかで子供がむずがると、男性たち(ひげ面で強面が多い)が次々に抱っこしてあやしてくれるの」だそうです。

自分自身も含めて、他者の育児や他人の子どもに対する寛容性を少し高める必要があるなぁと、反省でございます。


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