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ドイツ│労働法と雇用法の注意点

2018.10.14

ドイツにおける労働法の注意点

労働時間について

月曜日から土曜日がドイツでは平日ですから、労働することは可能です。日曜日と祝日は、基本的に労働は禁止されています。法人の代表者または単独代理権を持つ支配人などのトップレベルのマネジメントは、祝日と日曜日の労働は許されており、禁止されていません。

平日の労働時間は8時間に限定されています。6ヶ月間または24週間内の平日の平均労働時間が8時間となるように調整するならば、各平日10時間までの労働が可能です。月曜日から金曜日まで勤務するならば、平均時間数を計算する際には、土曜日を考慮することで調整することが可能となります。休息時間は、6時間から9時間労働の場合には、最短で30分間です。

会社内で労働時間法の条文をいつでも、誰でも閲覧できるように置きませんと、科料の処分の対象となります。また、普通の従業員を祝日および日曜日に勤務させるためには、例外許可を営業監督局から取得しなければなりません。その際に勤務時間の記録の提出が求められます。その分析で労働時間法の違反がある場合には、科料の対象となりますから、勤務時間を記録することは好ましくないでしょう。またコンピューターで労働時間を記録する義務は、法的に存在しません。

実務では、労働時間が固定されている制度、フレックス制度および裁量制度と分けられています。裁量制度の場合には、いつ、どこで勤務するかを従業員に任せる制度です。固定制度とフレックス制度が一番頻繁に適用されています。フレックス制度の際に注意しなければいけない点は、毎月の勤務合計時間が最低および最高の時間数を下らないまたは超えてはいけないと記載して、訂正を次の2ヶ月間内に実行することを義務付けることです。

有給休暇について

ドイツ有給休暇法第3条1項では、有給休暇の年間最低日数は、24平日(Werktage=月曜日から土曜日)と記載されています。判例によれば、これは週6日間勤務する場合に適用されます。週5日間勤務する場合には、20平日となります。在独日系企業の事務系の方達はほとんど週5日間(月曜日から金曜日)勤務していますから、年間20平日=4週間を休暇として与えることで、法律の義務を果たすことになります。

個々の労働協約では、年間有給休暇は30勤務日=Arbeitstag=月曜日から金曜日=6週間と記載されています。ノルドラインベストファレン州の貿易業界の一般労働協約に関して、州政府の一般拘束宣言を過去していたために、多くの日系企業の雇用契約では年間有給休暇は30勤務日を記載しています。一般拘束宣言は、同州に関しては取り下げられていますので、法的には自由に交渉することができます。

なお応募者に対しては、前雇用者から当該暦年に関してどれだけの日数を有給休暇として消化しているかの確認書を提出することを要求できます。応募者が前雇用者のところで当該暦年に関してすでに30平日の有給化を消化している場合には、御社は応募者に対して当該暦年に関しては有給休暇を与える必要がありません。

有給休暇は、暦年に対して与えられます。事業所上の理由または従業員の病欠などの個人的な理由で12月31日まで消化できない場合には、翌年の3月31日まで消化されていない請求権だけが繰越されます。その要件が満たされない場合には、12月31日24時に未消化の請求権は自動的に消滅します。法律では、雇用契約終了が原因で消化できない請求権だけを買い取ることができるとされています。それを無視して買い取りますと、最悪の場合には、当該従業員としては有給化を取ることを主張できます。

雇用契約について

日本で就業規則と呼ばれる書面がドイツの雇用契約に相当します。社内での個々のルールを別に作成することは出来ます。内容としては、社内の総務観点からのルールとなります。法律では、書面で締結することを義務化していませんが、実務では書面で締結します。

日系企業の場合には、英語とドイツ語で締結することが推薦です。裁判になる場合の、条文の解釈の場合には、どうしてもドイツ語の文章のニュアンスおよび言い回しなどが重要となるからです。日本法を準拠法として決めることは、契約内容の自由の原則から基本的に可能ですが、お勧めできません。

従業員保護のために存在する法律:労働時間法、解雇保護法、有給休暇法、妊婦保護法、育児休暇法、事業所組織法などをドイツの労働裁判所は、ドイツ社会の基本的な秩序の一環とし、準拠法の選択で避けることはできないと主張して適用するからです。

雇用契約│POINT①

採用のポジションを記載します。秘書ならば秘書、アシスタントならばアシスタント、外部営業のセールスマンならば、通常その名称で普通要求される業務内容をこなすことを要求することができます。日系企業では秘書またはアシスタントに対してサポート業務だけではなく、通訳・翻訳・経理の援助活動・購買・販売・マーケッティング全般の助けをすることを要求しています。後日の争いになることを考えた場合には、Job Descirptionを雇用契約に添付するべきでしょう。

ドイツ法では、Managerと言う概念がありません。日系企業は、ドイツ人をマネジャーに任命した場合には、日本本社の幹部候補者と同じように良く働き、いつでも経営者からの目で行動する保証はありません。権利と義務を明確にするべきでしょう。ドイツではマネジャーは部下を持ちます。日系企業では部下を持たない従業員もマネジャーに任命されることがあります。労働法観点からは、法人の代表者でない限りには普通の従業員として取り扱われることになります。

雇用契約│POINT②

勤務地は普通会社の所在地となります。営業マンが自宅のホームオフィスから顧客を訪問する場合には、その自宅の所在地を義務履行の場所として記載することを要求してくることがありますが、それを断るべきです。結果として交通の便利が悪い遠距離の場所で裁判をすることになりますから、会社にとって好ましくないです。

雇用契約│POINT③

週労働時間を記載します。法的には週48時間までの勤務時間を記載することは可能ですが、通常は週40時間が一般的です。

雇用契約│POINT④

給料の場合には、グロス月給またはグロス年給を記載します。

ドイツ人従業員がボナースを要求する場合には、内容を区別するべきです。ドイツには日本のボナース制度は存在しません。一般従業員の場合には、暦年に関して13ヶ月目の給料を払うことがあります。その際にグロス月給の100%に相当する金額を11月に払うのかまたは半々にそれぞれ6月と11月に払うときめることが頻繁ですが、法的な義務ではありません。ポジションが高い従業員の場合には、グロス月給を12回払うことになります。

会社として、月給を年間13回払う義務を負いたくない場合には、自発的に景気が良いときのみに何かを払うことを決めることができます。ただしそのような行為は3回続けますと、判例では、事業所慣習であると判断して、従業員として権利を取得したと解釈しますから、要注意です。

雇用契約│POINT⑤

ドイツでは法律では昇給する義務を明文化していません。

各地域の多数の業界では、経営者団体と社外組合が、賃金交渉をして賃金労働協約を締結します。雇用契約で、その労働協約の適用対象となると記載されている場合または州政府の判断で一般拘束宣言を得ている場合のみに、拘束力が発揮します。そうでない場合には、昇給の有無および率を自由に決断できます。

ただし社内全体の従業員全体に物価上昇率をカバーすることで昇給を決めた場合は、高給取り従業員を給料の高さだけを理由に、昇給から外すことが、平等取り扱いの原則に違反するので法的に無効となります。つまり当該高給とりの従業員の給料も同じように昇給しなければなりません。

日系企業の多くは、賃金労働協約で決められている最低賃金額を超えた給料を払っています。賃金労働協約で決められて賃金昇給率は、最低賃金に適用されます。その結果を超えている金額を払っている場合には、労働協約観点からは昇給する必要はありません。昇給をしないと、間接的に肩たたきをしていると解釈するドイツ人もいます。

雇用契約│POINT⑥

外部営業担当の従業員が頻繁に出張する必要がある場合には、会社が社有車を買うまたはリースして、従業員に与えることがあります。従業員としては、社有車を営業と私用目的のために使うことを望む場合があります。それを許可するかしないかは、会社の経営判断となります。

私用を許す場合には、社有車提供は従業員の給料の一部となります。従業員は会社からの現物支給から発生する所得税を負担しなければなりません。具体的には、当該車の新規購入グロス価格の1%に相当する金額が給与明細書に記載されて、従業員負担の賃金税の対象となります。それ以外にも、自宅と会社の通勤キロメートルに関しても賃金税がかかります。

例:

車のリスト価格=3万ユーロ、1%=300ユーロ

通勤距離=20キロメートル│3万ユーロ×0.03%=9│9×20=180ユーロ

合計=480ユーロ


私用を許すことは、住宅と事務所の間の通勤だけではなく、週末の旅行および有給休暇の際の旅行でのガソリン代を会社が負担することになります。方法論としては、有給休暇中のガソリンは従業員が負担すると決めることも可能です。ドイツの社会保険と所得税の負担が高いので、昇給があったとしてもネット給料額にその昇給の事実が反映されていないと感じることが、私用を求める原因です。出張の際の通常勤務時間外の移動時間は無給であると記載するべきでしょう。

雇用契約│POINT⑦

出張した場合に宿泊先で事故が起きた場合に、労災団体とこれが労災であるかに関して議論されるケースが頻繁にあります。そのような可能性を考えて、会社の従業員のために事故保険を締結することも一つの対応策です。

企業年金制度を導入する義務は存在しません。ただし従業員としては、給料の一部を金融機関に自動的に送金することを雇用者に対して要求することができます。それ以外には会社が直接企業年金の債務者になることも可能です。他の方法は、会社の従業員ならば、特定生命保険会社に健康チェックなしで、生命保険を締結する制度を導入することです。その際には、保険料を会社だけ、従業員だけまたは両者がそれぞれ半々負担するかを自由に決めることができます。

公的高齢者年金支払いの要件が満たされる暦月末に自動的に雇用契約が終了すると記載しませんと、高齢者を年齢だけを理由に解雇することは禁止されています。

ドイツには退職金および退職制度は存在しません。従って雇用契約を年金生活開始の時点まで継続する義務が存在します。従業員が自己退職することは問題ありません。会社が解雇する場合には、解雇保護法が適用する場合には、解雇を正当化する理由が存在しないと難しくなります。

雇用契約│POINT⑧

ドイツ民法第623条では自筆サインの手紙でなければ解雇は無効となります。電報、ファックス、電子メール、テレックスなどでの送信は有効でありません。郵便発送・配達業者を通しての発送・直接受け渡しすることになります。

最長6ヶ月間までの試用期間中には、2週間の告知期間を設けて、解雇または自己退職することは可能です。契約に他の取り決めがない場合には、試用期間以後は、従業員は4週間の告知期間を設けて15日または暦月末に対して自己退職することができます。雇用者は、最初の2年間は同じ告知期間を設けて15日または暦月末に対して解雇することができます。2年間過ぎますと解雇告知期間は、暦月末に対して1ヶ月間となります。

勤続年数が5年間、8年間、10年間、12年間、15年間、20年間を過ぎますと、解雇告知期間は暦月末に対して2ヶ月間から7ヶ月間と延長されます。解雇する告知期間が法律で延長される場合には、従業員の自己退職か告知期間も同じように延長すると記載することは可能です。

多くの日系企業は、突然退職されることを防ぐために、暦月末に対して3ヶ月間の解雇告知期間を設けていますが、そのような義務はありません。採用候補者が、四半期末(3月31日、6月30日、9月30日、12月31日)に対しての告知期間を提案してくることがありますが、これに3ヶ月間の告知期間を設けますと、場合によっては、6ヶ月間の告知期間となりますから、断るべきでしょう。

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