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【前編】グローバル研修のすゝめ│求められる能力とその獲得

2019.03.18

海外赴任者が期待される役割やミッションを果たすには、どうすれば良いのか、そのために会社側にはどのような送り出しの支援が求められているのか。企業によっては、社内外の講師を活用した赴任前研修を行っているところもあるが、内容は千差万別。日本企業の海外展開が加速する中、グローバルに活躍できる人財に求められる要件、そのために必要な研修とは?

リログループでグローバル研修事業を担当しているリロ・パナソニック エクセルインターナショナル(株)の西川誠さんに話を伺った(全2回)。

いわゆるグローバル人財には、どんな能力が求められているのでしょうか。

大きくは3つあります。一つ目は当たり前ですが担当業務における専門性です。二つ目は語学・コミュニケーション力です。どんなに仕事ができても、現地の人々と協働するために必要な最低限のコミュニケーション力が無ければ仕事になりません。三つ目は、異文化への理解と対応力です。仕事ができ、コミュニケーションができても、日本のやり方をそのまま押し通したり、現地の人々が大切にしている価値観を踏みにじるようなやり方では共感・協力が得られぬどころか、反感さえ生まれます。二つ目と三つ目に共通して言えるのは、ほぼ単一の言語、単一の民族の島国で育った大半の日本人にとっては、日本に居ながら自然に身につくスキルではなく、時間をかけて意識的に学ばねば習得できないスキルであるということです。

その他、現地で部下を持つマネージャー以上の管理職であれば、仕事の専門性以外にも、人事労務、財務、法務・コンプライアンス等、マネジメント上のスキルが必要になります。また、会社によっては独自の要件を加えられているところもあります。例えば、自社の企業理念を現地従業員やステークホルダーに自らの言葉と体験で語り、実践・浸透できることや、影響力=人間力を重んじられているところ、等々です。

海外赴任前研修を行っている日本企業はどれくらいあるのでしょうか。

全ての日本企業の実態を把握することは難しいですが、いくつかの調査機関・団体が独自にサンプリングしたデータがあります。概して、グローバル人財育成への課題は認識しつつも、語学研修以外には手をつけられていないところが多いようです。弊社では、年4回、東日本と西日本に分けたグローバル研修体験会を開いており、過去2年間に大手・中堅企業を中心に200社以上の人事・人財育成部門に参加頂きました。アンケートでは、海外赴任前研修を定期的に実施されているところは全体の半数に満たず、より手前の候補者育成研修に関しては全体の80%が実施していないという状況です。

一方で、弊社の赴任前研修に参加する受講者へは、受講前のヒアリングシート、受講後のアンケートを頂いておりますが、全員例外なく、異文化への対応や言葉・コミュニケーションへの不安、現地人とうまく仕事ができるか、生活面での気がかりなこと、等が書かれており、送り出す側の対応を強化する必要性があると感じております。

異文化への対応力が不足していると、どのような問題が起こるのでしょう?

実際に赴任しないとイメージや実感が湧いてこないのですが、端的に言えば、現地の人々との文化的な摩擦です。仕事や生活に対する価値観は国毎に異なります。厄介なのは、そのような価値観は幼少期から12歳ぐらいまでの間に、親兄弟や学校教育で無意識に刷り込まれており、当たり前と思っていることです。ところが、一歩、外に出てみると、その国にはその国特有の価値観があり、日本人の価値観が通用しないということに初めて気づかされるのです。

日本でも働き方改革やワーク・ライフバランスといった言葉が毎日のように紙面を賑わす時代になってきましたが、海外では昔から家族・プライベートな時間の確保が最優先という価値観が当たり前のところが多くあります。家族より仕事が優先という働き方の国はほぼ存在しないと考えた方が良いくらいです。そんな価値観の国々に派遣され、日本流のやり方をそのまま押し通そうとしたり、残業や休日出勤を強いるようなことをすれば、どうなるでしょう。

反感を買ってしまいそうですね。

自分を飛び越えて上層部に苦情が入るというケースもあります。そうした状況になってしまうと、部下から信頼されなくなり、最悪、任を解かれて帰国を余儀なくされるといったケースさえあります。ある調査では、ヒアリングした企業の半数以上が、現地に適応できなかった赴任者がいると回答しています。これは海外赴任者を数多く出している企業でも未だに起きていることです。

語学力さえあればなんとかなると思っていましたが、そういうわけにはいきませんね。

語学・コミュニケーション力と異文化理解・対応力は、いわば車の両輪のようなものです。部課長クラスになるとなおさらです。マネージャー以上になると現地社員の人事評価をする必要がありますが、日本人と違って遠慮せず率直にものを言う国も多いですから、給与や処遇に納得できなければ、とことん食い下がってきます。

マネージャーとして、限られた原資の中で、何人もの部下の昇給分を割り振って、それでいて全員に不公平感を抱かせないためには、フェアな信賞必罰と相手を納得させられるコミュニケーション力が必要です。また、その国の価値観や国民性に合わせたフィードバックをしなければ、プライドを傷つけたり、職場に不協和音をもたらす原因になったりもします。

逆に、国の文化によっては、むしろ遠慮をせずに言った方が良い場合もありそうですね。

自己主張するのが当たり前の欧米では、会議などで発言せずに黙っている日本人は、能力が不足していると思われます。本音を隠す人、日本人だけで密室会議をやっているに違いない、時には実情を探るために本社から送られてきたスパイといった、あらぬ誤解を招くことさえあります。一度失った信頼を取り戻すためには時間がかかりますし、そうなると、せっかく高いスキルを持った人財を海外に派遣しても、能力が発揮できなかったり、発揮するまでに時間がかかったりといったことが起こります。

異文化への対応力がとても大切であることが良く分かりました。では、リロ・パナソニックインターナショナルでは、そのためにどのような研修を行っているのでしょうか。

異文化への理解や対応力を培うための研修としては、ホフステード博士の6次元モデルを使った『異文化理解・対応力研修』というコースがあります。世界100ヶ国以上の国民文化(価値観)を6つの次元で数値化・相対化したデータを使い、赴任国の平均的な価値観と日本の価値観、自身の価値観を比較して、現地で遭遇するかも知れない衝突を赴任前に予備知識として持っておくためのツールを提供します。

年間、1,500人以上の受講者からアンケートを頂いておりますが、特に二回目以降の再赴任者は、過去の赴任時に遭遇した問題の原因をこの研修を通じて理解し、「前回赴任前にこの研修を受けたかった」、「赴任者だけではなく、海外と関係する社員全員に受けさせるべき」といったコメントも多数頂いております。

それは興味深いデータですね。その切り口から各国を見るだけでも、かなりのことが分かりそうです。

上述のホフステード理論を用いた異文化理解・対応力研修以外にも、海外会社経営の基本と役割の理解(異文化ビジネスの基本)、海外人事労務管理、海外財務・経営管理、国際法務・コンプライアンス、地域事情(エリアスタディ、40ヵ国以上)、若手のグローバル人財候補者育成等、様々なコースを用意しておりますが、異文化理解は、多くの講座の底流に流れる不可欠な要素です。

異文化を理解する研修というのは、大学の講義のようなイメージを抱いていましたが、リロ・パナソニックエクセルインターナショナルの研修は、きわめて実践的に役立てられる内容と言えますね。後編では、海外赴任者が経験した失敗談なども含めて、もう少し詳しくお伺いしたいと思います。

【後編はこちらから】リンク:【後編】グローバル研修のすゝめ│求められる能力とその獲得

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