赴任地:シンガポール│飲食業マネジャーが、日本式マネジメントを諦めた日【前編】
株式会社フレックスコミュニケーション代表、プロコーチの播摩です。
これから毎回、前後編で海外赴任者の体験談を掲載します。
Episode1は、国内で飲食店を数多く展開する企業のマネジャー、五十嵐さんです。
赴任先はシンガポール。5年間の勤務を終え、今年東京本社に帰任しました。
飲食業、40代で初めての海外赴任
新卒で今の会社に入社しました。
とはいえ店舗経験はなく、ずっと管理部門で、まさか40代半ばでシンガポールへ転勤になるとは思ってもいませんでした。
はい。海外赴任は初めてでした。
当社は、シンガホール国内で十数店舗を展開しています。私は、赴任先現地法人ではナンバー3のポストで、管理部門のマネジャーでした。求められるタスクは店舗の統括管理で、本社在任中とそれほど変わらないものという認識でした。
ところが、行ってみると甘くなかったですね。
本社とは規模観が違うので、本当にいろいろやらなくてはならない。購買、人の採用、数字の進捗管理、新規出店。着任してすぐに、ある店舗の業態を変えるところに立ち会って、東京本社での仕事がいかに楽か気づきました。
たとえば、厨房を改装するためにガスレンジ一つ動かすのでも、シンガポールの法律を知らなければ業者の図面にOKを出せないんです。そういったことも私の仕事になります。
また、シンガポールでは店舗の賃借料は売り上げに連動するのが一般的なので、テナントオーナーは売り上げにどんどん口出しをしてくる。そういう交渉もしなくてはならない。結局、店舗のオペレーションを分かっていないと、シンガポールでの仕事は何も進まないなと感じて、とりあえず現場に出ることにしました。
だれも話しかけてこない日々 得意のマネジメント力も発揮できず
赴任当初は、朝オフィスに出社し、午後から店舗で閉店まで働く毎日でした。きつかったですよ。
シンガポールでは、飲食業は低賃金で労働時間が長いので、本当に人気がないんです。で、マレーシア、ベトナムから労働ビザで来ている非シンガポーリアン頼みになるのですが、彼らは突然の欠勤や遅刻は珍しくないですし、少しでもいい条件の職場があると、すぐに辞めてしまいます。
シンガポールは法律で、シンガポーリアンと非シンガポーリアンの雇用比率が決められています。欠員が出たときに、仮にマレーシア人で就労したいという人がいても、シンガポール人を一定数雇っていないと雇用できないことがあるんです。これは厄介でした。で、私は各店舗の穴埋め要員のようになってしまって、結局なかなか現場から抜けられず、半年間以上事務所、店舗掛け持ちで仕事をしました。
現場では、フロアリーダーという日本でいう店長職が仕事を一通り教えてはくれるのですが、ほかのスタッフたちは、誰も声を掛けてくれませんでした。距離を置いて、近づいてこない。こちらを見て、英語や現地語でヒソヒソ何か話をしている。
今考えると「本社の管理者が来ている。性格が分からないので遠巻きに見ていよう」と、おっかなびっくり観察していたのですよ。あちらの現場では、まだまだ「怒鳴る」などの権威主義を振りかざすマネジャーがいるのですね。ですから、私が感情的に叱るタイプかどうかを見極め、自分へ降りかかる火の粉を最小限にしたかったのでしょう。
いいえ。私は、日本ではファシリテーター型のマネジメントをするタイプでした。
でも、英語は得意ではなかったので、スタッフになかなか伝わらない。TOEICの勉強を真剣にしてこなかったことを、さすがにこのときは後悔しましたね。遠巻きに見られている期間が長く続いたある日、ちょっとした事件が起こったのです。それから、少しずつ彼らの様子が変わってきましたね。
受け入れられるきっかけは言葉を超えたもの
レストランのスタッフには、割とはっきりしたヒエラルキーがあります。一番底辺とみられているのが、一日中食洗器で洗い物をしているスタッフなのです。ある日その人が急に来なくなった。で、現場では、その日誰が食洗器を回すのかが問題となり、全員がすごい剣幕で「私は絶対にやりたくない!」と主張しはじめたのです。フロアリーダー、キッチンの調理人、フロア担当はそれぞれ持ち場のプロですから、彼らが抜けるより、私がやるのが合理的なのです。
「じゃあ、私がやろう」と言ったとき皆、目を丸くして驚きました。本社からやってきた、いわゆるお偉いさんが「やる」と言うとは思わなかったんでしょう。
その日からですね。彼らから話しかけてくれるようになったのは。
簡単な英語で「イガラシ、どこに住んでいるの?」、「家族は?」、「イガラシ、休みの日にはどこに行ったの?」など、フランクに会話ができるようになっていきました。 リンク:【後編はこちらから】

海外赴任者対象コーチングとは?
海外赴任が決まったら、まず何を行ないますか?
各種手続き、子供の教育機関の手配、自分の健康管理、赴任地の文化の勉強などに時間をとられている間に、あっという間に出発日になってしまうことは多いのです。そんな赴任者は「出発日になっても実感がない」「向こうに行ってから成果を上げられるか心配」などと言います。
それは
「何を求められて赴任するのか」
「本社とのコミュニケーションはどうしたらいいのか」
「帰任までにどういう成果をあげたらいいのか」
など業務上の不明確な点を抱えたまま旅立ってしまうことに原因があります。
生き馬の目を抜く海外市場で、「日本人は、着任後3ヶ月以上仕事をしない。あいさつ回りで無為に時間を費やす」という評価があります。単なる交代要員として気楽に赴任するために、海外市場の中で競合に遅れをとっているのです。
同様に、数年間、目標なく駐在してきたために、「帰任時」にウツに見舞われている人も増えています。
在任中目立った成果を出せず、日本国内の事情に疎くなっていることが原因の1つです。
これらの問題を解消し、海外在任中に成果を出し、帰任後も充実した業務を継続するために
プロコーチがサポートをするのが「海外赴任者対象コーチング」です。
※上記画像をクリックすると詳細な内容がご覧いただけます
【こちらのコンテンツもご覧ください】
リンク:Episode1│飲食業マネジャーが、日本式マネジメントを諦めた日【後編】
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