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Episode1│飲食業マネジャーが、日本式マネジメントを諦めた日【後編】

2019.04.02

赴任地:シンガポール│飲食業マネジャーが、日本式マネジメントを諦めた日【前編】

株式会社フレックスコミュニケーション代表、プロコーチの播摩です。

これから毎回、前後編で海外赴任者の体験談を掲載します。

【前編はこちらから】リンク:飲食業マネジャーが、日本式マネジメントを諦めた日

Episode1は、国内で飲食店を数多く展開する企業のマネジャー、五十嵐さんです。

赴任先はシンガポール。5年間の勤務を終え、今年東京本社に帰任しました。

心の壁は自分がつくっている

現場のスタッフに溶け込めるまで、ですから数か月かかりましたね。

日本だったら、上司が新しく赴任したら、部下がだいたい気を利かせて、話しかけてきます。自ら歩み寄り、人間関係をつくってくれて、宴会では雰囲気も盛り上げてくれます。シンガポールではそんなふうに新任の上司をモチ上げようなどというスタッフはいませんでした。

でも、人間同士ですから、受け入れてさえくれれば、人としてのつきあいはちゃんと始まるのだと分かりました。彼らとは、結局いつも一緒にマカナイを食べる仲になって、やがて彼らも上下関係を意識せずに接してくれるようになりました。

帰任のときは、送別会もしてくれました。日本と何も変わらないじゃないかというくらい、親しくなれましたよ。送別ギフトを皆がくれたのですが、そこにはちゃんとメッセージカードも添えられていて、帰国したくないくらいでした。

赴任時、私が言葉の壁と思っていた壁は、実は心の壁だったのかもしれません。それを取り払うのは、海外では部下ではなく、マネジャーの仕事なのだと思いますよ。

察しあいはない社会

オフィスでも日本人は数えるほどで、9割以上が現地採用の社員です。

彼らも当初日本からやってきた管理者である私に自分から話しかけようとはしませんでした。

一番衝撃を受けたことは、命令されていないことは「絶対に」しないということです。

日本の本社で、たとえば部下にデータ管理を任せていたとします。データ管理という言葉自体が、あいまいと言えばあいまいですが、東京の私の部下は「データ入力」、「集計」、「売り上げが落ちている店舗の聞き取りと分析」まで行なって私に報告していましたね。

シンガポールでも私が数字の管理で行なうべきことは基本的に変わりませんでした。しかし、担当者は「データ入力」、「集計」までしかしていません。私がそれに気づいたのは、数か月たってからです。

売り上げが下がっている店舗があり、「これはどうしたの?」と聞くと平然と「知らない」と答えるのです。「なぜ聞き取りや分析をしないのか」と質問すると「それは私の仕事ではない」と臆面もなく答える。早く伝えてくれれば、適切に対処ができたのに、という私の苛立ちなんて、そのスタッフはまるで関心がないのです。

シンガポールでこんなことが起こったら、「明確に指示・命令しなかった自分自身のせいだ」と諦めるべきです。 彼らに、自分の仕事の範囲を推し量ったり、上司の期待を察したりということを求めてはいけないのです。では、「聞き取り」「分析」をできないかというとそうではない。そのときから私は、指示はしっかりと言葉で伝えるようにしました。

「数字が落ちると、それは心配なことだよね。私は、その原因を早く知りたいと思うから、店に行って聞き取りをしてください。それも含めて、次回から推移については月ごとに報告してください」

こんなふうに言えばちゃんとできる人たちなのです。日本人に比べ、決して何か劣っているわけではありません。海外赴任したマネジャーがよく「現地のスタッフに日本のマネジメントは通用しない」という愚痴をこぼしていたのを思い出しました。

シンガポールで私は、はたと考えました。

日本国内だって「タスクの目的・何をすべきかをしっかり伝える」という指示・命令は重要なはずなのです。しかし、日本では優秀な部下が気を利かせ、察してくれたから、私に抜けがあっても何とかうまくいっていただけなんだ。つまり日本国内での私のマネジメントは、グローバルで通用しないショボイものだったのだろうと。本社でうまくできていたと感じたのは幻想だったのです。

日本国内でうまくいっていると感じている日本人マネジャーのスキルは、実はつたないのだと思います。

そして、海外赴任したら、それを自分自身のマネジメントの成長の機会ととらえるしかありません。察し合いながら、なんとなくうまくいくことなど、海外ではないのです。

フレックスコミュニケーション 

海外赴任者コーチングコーディネーター播摩からひとこと

日本のように「察しあい」の文化がないことで、海外赴任した人は、必ずと言っていいほどパンチを食らうような出来事に遭遇するようですね。

日本人は過去長い間、農民として父祖伝来の土地から動かず、隣近所は全員近い価値観をもっていたので、顔色一つで理解しあえる社会だったのでしょう。しかし今、こんなに多様な人が就労している日本の企業で、察し合いが通じると考えること自体が、危険なのではないでしょうか。その危険を回避するためには、やはり言葉を惜しまないことなのだと思います。

【こちらのコンテンツもご覧ください】

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