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グローバル研修 中村 好伸 人材育成 日本

【後編】赴任前に知っておきたい異文化対処法

2019.02.15

誰にでも「メリークリスマス」か

 入社して8年、サラリーマンの常識「家を買うと転勤」の通りアメリカに転勤になったのは1983年の12月でした。個人的にはもう少し日本で仕事をしたいと思っていましたがアメリカ勤務は長年の夢、気持ちを切りかえて赴任しました。

 アメリカでは12月10日を過ぎると、ホリデーシーズンでパーティや会食が多くなってきます。ある日10人ほどのアメリカ人と一緒のテーブルで食事をすることになり、アメリカ赴任直後のアメリカ大好き人間の私は乾杯の時、張り切ってワイングラスを持ち上げ「メリークリスマス!」。すると隣にいた米国勤務の長い日本人の先輩が、テーブルの下で私の膝をぴしゃりと叩いて、アメリカでも皆がみんなクリスマスを祝うわけではなく、この時期には「ハッピーホリデーズ」と言って乾杯するのだと教えてくれました。

 皆さんは世界中に1つだけ12月10日を過ぎると全国民がキリスト教徒になる国があるのをご存知ですか?そのキリスト教徒たちは家族全員でクリスマスを祝うかと思えば、12月31日の午後11時45分になると、テレビのチャンネルを替えて今年の除夜の鐘はどこのお寺かどうかと熱心に見て、除夜の鐘を聞きながら静かに新年を迎える仏教徒になります。そして新年を迎えると、さあ初詣に行こうかと言って近所の神社に。こうしてキリスト教・仏教・神道と3つの宗教を渡り歩く。こんな文化をもつ民族は世界中探しても他に見当たりません。もうお気付きですよね。私たち日本人です。

 海外のクリスマスカードはなんて書いてあるでしょうか。日本では平気で"Merry Christmas"などと書きますが、アメリカでは自分がキリスト教徒であっても相手はそうではないかもしれない、または自分はキリスト教徒ではないといった理由から、Merry Christmasとは書かないことを学びました。したがって年を越せば当然"Happy New Year"ですが、挨拶のカードを出すのは年末でクリスマス前に書くので、主流は"Season's Greetings"、まあ日本流に言えば、季節のご挨拶を申し上げますといったところでしょうか。

 少し前までクリスマスカードと呼ばれていたカードは、今はグリーティングカードと呼ばれています。その文面としては、"Season's Greetings and a Happy New Year"あるいは"Happy Holidays & Happy New Year"といった、相手がどんな宗教でも使い回しできるフレーズを使うようになってきています。もちろん皆さんが受け取る日本の事務所向けには「メリークリスマス」が多いでしょう。

3つの言葉、4つの心構え

 この地球上には国、地域によってそれぞれ独自の文化が育まれていますが、前述の通り「文化」には優劣もなければ上下もない。そこにあるのはただ「違い」だけ。つまり「文化」とは、多様で独自の存在なのです。このことを知り、自文化以外の異文化に接するときは、その文化を十分に尊重することが、私たち一人ひとりのグローバル化の第一歩です。

その時に有効なのが、ここに紹介する「心を開く3つの言葉」

―Thank you , Please , Excuse me。


 皆さんもぜひこの3つの言葉を、現地の言葉で覚えてください。現地の人々と一緒になって喜怒哀楽を共にする。一緒に飯を食って、飲める国ではお酒を酌み交わす。そうすれば、お互いに心を通わせることができる。心が通じ合えば、理屈抜きでの信頼が生まれ価値観を共有してお互いの文化の違いを乗り越えることができるのではないでしょうか。

異文化対応に必要な3つの要素

もう一つ、上手な異文化対応に必要な要素が3つあると思っています。


1.楽観的

異文化の環境では問題や対立が頻繁に起こります。全てを真面目に受け止めることも大事ですが、時には「何とかなるさ」という楽観的なゆとりも必要です。


2.柔軟性

突拍子もない相手の言動に驚かされたり、頭にきたりすることがよくあります。異文化環境での現実、不慣れな事柄にいつでも柔軟に対応できるようにしたいものです。


3.忍耐力

異文化の中に入ると、不可解なことが次々に起こります。日本で自分のやり方が通用したから異文化の中でも通用するはずと思い、日本流を押し付けてはいけません。現地のやり方・考え方を忍耐強く学び、新しい判断と行動を身につけた方が得策です。


4.好奇心

相手の文化、人間性、言動などに大いに好奇心を持ちながら人と接するようにしましょう。この積極的な姿勢は、相手にとって大変うれしいものです。よりよい人間関係をつくるためにも、「旺盛な好奇心」を持ち続けることはとても大切です。


 以上4つの重要な要素ですが、世界中には写真を撮っただけでも拘束される国があるので、くれぐれもそれぞれの国に合った行動をとってください。

異文化をいい(良い)文化に

 海外勤務に行かれる皆さんに、最後にお願いしておきたいことがあります。現地人は皆さんを通じて日本を認識します。皆さんは「○○国駐在の日本大使」なのです。日本の現況・文化・歴史にも興味をもってください。歌舞伎で好きな演目はありますか?能と狂言はどう違うのかご存知ですか?柔道・剣道・空手・書道、何かできるものはありますか?もしあれば、ぜひお子さんの学校のイベント等で日本文化として紹介してはどうでしょう。

 それと、地域との共生にも注意を払うようにしてください。例えば、その地域で決められたベランダの花・芝生の手入れ・道の雪かきなど、ご近所のルールには従うこと。最近ではかなり浸透してきましたが、国によっては家や車に一定年齢に満たない子どもだけを残しておくと児童虐待になってしまうことがあります。アメリカでは隣の独居老人が警察に通報するケースもよくあると聞いています。どうか赴任者の皆さんはくれぐれもご注意ください。

【本稿は、月刊グローバル経営 2017年7月/8月合併号に掲載した内容です。】

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