INTERVIEWインタビュー
年々拡大する外国人籍社員の雇用・受け入れ。人事の現場で最初の問題となるのが、在留資格の取得に関する手続きだ。専門知識が必要なうえ、法改正も多いため、思わぬトラブルに陥るケースも少なくない。多くの企業が専門家に申請手続きの代行を依頼しているのはそのためだ。そこで今回は、海外法務労務のプロフェッショナルとして数多くの企業から厚い信頼を受けている行政書士法人『シンシアインターナショナル』の鶴野祐二先生に、在留資格にまつわるよくある落とし穴や、近年のトレンドなどについておうかがいした(全3回)。【話し手:鶴野 祐二(行政書士)│聞き手:海外赴任LAB編集部】
- 編集部
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入管法改正の国会議論が注目されるなど、外国人の雇用・受け入れは、今や社会全体の関心になっています。まずはここ数年の状況について教えていただけますか。
- 鶴野
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厚生労働省が発表した外国人雇用状況の統計データによれば、平成29年の外国人労働者数は127万人となっています。ある新聞では、永住者なども含む在留外国人が過去最多の263万人に達したという報道もありました。外国人の受け入れ拡大は、ここ数年で非常に顕著です。とはいえ、他の先進諸国にくらべると日本はまだまだ少ない方です。今後はさらに増えていくでしょうし、国としても増やしていかなければならない状況にあると思います。
- 編集部
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受け入れるべきか否かという議論も非常に活発ですね。
- 鶴野
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経済界では圧倒的な人手不足という切実な実情があります。現在の在留資格は一定以上の専門性のある範囲が対象で、たとえば飲食業や建設業などの現場での作業については対象外となっています。にもかかわらず、そうした現場での人手不足が著しいということから、そうした範囲も在留資格の付与対象として欲しいというのが経済界の要望です。一方で、急激に外国人が増えると、治安などの面で不安だという声もあります。
- 編集部
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最近だと、技能実習生の失踪問題がニュースで取り上げられていました。
- 鶴野
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技能実習生を受け入れる経路には大きく分けて2つあります。企業単独型と、団体管理型と呼ばれるものです。失踪問題のほとんどは団体管理型で発生しています。団体管理型とは、まず海外に人を集めて一定の教育を施す"送り出し機関"があり、そこから送り出された技能実習生を、今度は日本の"受け入れ機関"が受け入れて入国後の実習を行い、そのうえで各企業に派遣するというスタイルです。それぞれの機関とも、必ずしもしっかりしているところばかりではなく、また、受け入れる企業もさまざまですから、場合によっては非常に厳しい労働条件になっているところもあります。そのため、聞かされていた労働条件と違うとか、給料や労働環境が良いところを探したいという理由で失踪問題が起きているようです。
- 編集部
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もう一方の企業単独型とは?
- 鶴野
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日本の企業が海外の子会社から社員を招聘して、技能を学んでもらうというスタイルです。優秀な人材にさらにスキルを身につけてもらうことを目的に、待遇などの処遇もしっかりしたうえで来てもらうことが多く、実態としては企業間の転勤に近いと言えます。ですから、失踪という問題はほとんどありません。入国管理局などでもこうした状況を認識しています。これから外国人の受け入れを考え始めるという企業様の中には、技能実習生の失踪問題に不安を感じている方がいらっしゃるかもしれませんが、昨今の報道だけを見て過剰に心配する必要はないと思います。
- 編集部
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企業からの在留資格申請についての相談も増えているのでしょうか。
- 鶴野
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増えていますね。相談内容は非常に幅広いのですが、最近多い内容のひとつは、海外子会社から研修として社員を受け入れる場合のご相談です。ひとくちに研修といっても、在留資格という面から見た場合、技能実習としての招聘をはじめ、企業内転勤や一般就労として考えなければならないケースなど、さまざまな種類があります。どんなケースがどの在留資格に当てはまるのか、そしてそれぞれの在留資格を満たすためにはどんな要件が必要なのか。そうしたご相談が多くなっています。
- 編集部
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在留資格自体にもいろいろな種類があるそうですね。
- 鶴野
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28種類あります。くわえて、それぞれの資格ごとに要件や審査基準が異なりますから、経験の少ない人事の方では基本的な概要を調べるだけでも一苦労だと思います。
- 編集部
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一見、似たような受け入れの話でも、ちょっと条件が違うだけで在留資格も変わってしまうのですね。
- 鶴野
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たとえば海外支社の工場から外国籍社員を受け入れて、現場での研修を2か月間受けてもらうという場合。90日以内であれば短期滞在の出張扱いの形でいいと考えがちですが、日本に来て実際の現場での作業を行ってしまうと、滞在目的が「研修」から「技能実習」に変わり、在留資格も異なります。そのため、弊社がご相談をいただくときは、どのケースがどの在留資格に当てはまるのかといったことだけでなく、短期滞在中の活動内容についても、ご依頼の企業さまの方針に合わせたアドバイスをさせていただきます。たとえば「研修」で済ませたいのであれば、工場見学やミーティング、講義を受けるといった範囲で留め、実際の現場作業には携わらないようにした方が良いといった具合ですね。
- 編集部
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ある程度の知識を有した人事部ならともかく、工場などの現場サイドでは軽く考えがちかもしれませんね。
- 鶴野
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現場主導で受け入れの案件がスタートして、途中から人事部が引き継ぐといった場合もありますが、私が聞いた話では、ある現場の方が取引先で小耳にはさんだ「この場合なら短期滞在で在留資格が受けられるらしいよ」という話をうのみにしてしまって、その後、人事サイドに案件が移ってから、段取りをいちから組み直さなければならなくて困ったというケースがあったそうです。弊社がご相談を受ける場合、こういったケースでは、工場の方にも打ち合わせに参加していただいて、全体でご納得のうえで手続きを進めることが多いですね。
- 編集部
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工場などの現場の方が事情を知らないままだと、「人事部は何をやってるんだ」となりかねませんね。現場も含めた全体での打ち合わせを専門家にリードしてもらえれば、手続きを間違いなく行えるだけでなく、そういった部署間の信頼問題といったマインドのトラブルも回避できそうですね。
◆続きを読む→【中編】外国籍社員受け入れに際する在留資格のポイントとトレンド
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