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アジア インタビュー 受け入れ手続き 在留資格 外国籍社員受け入れ 日本 特集 鶴野 祐二

【後編】外国籍社員受け入れに際する在留資格のポイントとトレンド

2019.01.18

INTERVIEWインタビュー

年々拡大する外国人籍社員の雇用・受け入れ。人事の現場で最初の問題となるのが、在留資格の取得に関する手続きだ。専門知識が必要なうえ、法改正も多いため、思わぬトラブルに陥るケースも少なくない。多くの企業が専門家に申請手続きの代行を依頼しているのはそのためだ。そこで今回は、海外法務労務のプロフェッショナルとして数多くの企業から厚い信頼を受けている行政書士法人『シンシアインターナショナル』の鶴野祐二先生に、在留資格にまつわるよくある落とし穴や、近年のトレンドなどについておうかがいした(全3回)。
【話し手:鶴野 祐二(行政書士)│聞き手:海外赴任LAB編集部】

編集部

在留資格については、ルールに反してしまった場合のペナルティなどもあるのでしょうか?

 
 
 
 鶴野
 
 

厳しい罰則があります。たとえば不法就労をさせると、不法就労助長罪という罪が適用され、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金というペナルティが課せられます。企業にとっては、信用低下という問題も無視できませんね。実際にあった例としては、通訳の名目で外国人を雇用していた飲食業の会社が、店舗で焼き鳥の串打ちなどの単純作業をさせていたことで、その会社の社長が逮捕されたという事件もありました。事業主も処罰の対象となりますので、注意が必要です。

編集部

知らなかったでは済まされないという話ですね。

 
 
 
 鶴野
 
 

法定時間を超えて外国人留学生を働かせていたという事件もありましたね。資格外活動は週28時間以内と決められていますが、留学生によっては、2か所で働いている場合もあります。企業側では週に20時間以内だから問題ないと考えていたのに、2か所合わせて40時間となるため、意図せず不法就労となってしまったというケースですね。こうしたケースでも企業に責任が発生してしまうんです。在留カードの確認をはじめ、資格外活動の許可内容や、他でアルバイトなどをしていないかを含めて、しっかり確認・記録しておくことが大事だと思います。大手や外資系の企業さまでも、受け入れ人数が多くなったことから、個別の在留期限の管理がうまくいかないというご相談をいただくことが増えてきましたね。

編集部

他にも増えている相談内容があれば教えてください。

 
 
 
 鶴野
 
 

我々行政書士の担当領域以外のことで悩みを抱えている企業さまも多いですね。特に受け入れ後の生活のケアに関することが多いようです。たとえば住民登録や家の確保、仮住まいの手配や銀行口座の開設。人事部では、赴任したばかりの外国籍社員の方から、ゴミの出し方などの日本独自の生活習慣に関する質問をされることまであるそうです。受け入れる人数が少なくても、ノウハウがなければできないといったことも多いですから、こうしたことについては、アウトソーシングが向いている気がしますね。

編集部

ノウハウや確認事項の多さという意味では、在留資格の申請手続きも人事部が自力で全てを行うのは難しそうですね。

 
 
 
 鶴野
 
 

ご依頼をいただく一番の理由は、やはり手続きが複雑だからということです。たとえば東京の入国管理局に行っていただくとお分かりになると思いますが、いつもひどく混雑しています。窓口も、一般就労や永住許可、日本人配偶者、研修短期部門など、いくつもの部門に分かれています。詳しくない人が行くと、そもそもどの窓口に行けばいいかも分かりません。人事の方の中には、入国管理局に電話で質問をしようとしたものの、いっこうに電話がつながらないという経験をされた方が少なくないと思いますが、あの現場をご覧になったら納得されると思います。

編集部

ようやく電話がつながったとしても、説明が難しくて理解できなかったという話も聞きますね。

 
 
 
 鶴野
 
 

入国管理局は東京だけでなく、各都道府県にもありますよね。どこでも同じ法律に基づいているため基本的な審査の仕方や必要要件などは変わりませんが、審査官による裁量の違いがけっこう顕著だったりするんです。我々は今までの経験から、どこそこの入国管理局なら、あんな書類も揃えておいた方がスムーズだなといった想定ができますが、企業の人事部でそれを踏まえた対応をするのは、事実上不可能ではないでしょうか。

編集部

裁量の違いといえば、海外赴任の際のビザ申請で、領事によって対応が違うという話もよく聞きます。

 
 
 
 鶴野
 
 

我々もよく経験します。今までは企業内転勤として直接申請が認められていたのに、領事が変わったとたん、それが難しくなったとか。国による違いもありますね。たとえば中国やフィリピンでは直接申請するのではなく、指定の代理機関を通して申請しなければならないケースがあります。代理機関によっては、本来なら必要のない追加書類を求められることもあります。こうした状況下では、時間がかかってもいいのであれば経験の少ない人でもなんとかできると思いますが、スピーディに、そして正確に申請手続きを行うには、本当に色々なノウハウが必要だと思います。

編集部

さらに輪をかけて手続きを複雑にさせているのが、たびたび入国管理法がたびたび改正されることですね。

 
 
 
 鶴野
 
 

おっしゃる通りです。我々プロも、常日頃から情報をアップデートしておくことが欠かせません。今現在(2018年11月)も国会では改正についての議論が行なわれています。今回の改正案では、建設、介護、宿泊、農業、造船を中心に、技能実習の経験がなくても在留資格が得られるといった内容の議論に注目が集まっていますが、個人的に大きなインパクトになると思うのは、日本語を使う職場での在留資格の要件緩和ですね。このままの案で改正されると、日本の大学や大学院を卒業後、日本語を使う職場で、なおかつ年収が300万円以上の場合に、大学などで学んだ分野との関係性を問わずに在留資格が与えられるようになります。現在は学んだ知識と関連した業務や通訳翻訳などに限って在留資格が与えられることになっていますので、改正案が実現すると、留学生の日本での就職の幅が大きく拡大されることになります。

編集部

そうなると、資格の申請手続きにもいっそう知識が必要になるかもしれませんね。では最後に、鶴野先生が申請代行業務で心がけていることを教えていただけますか。

 
 
 
 鶴野
 
 

在留資格は、ひとつの案件についていくつも選択肢があるということです。外国の方を日本で受け入れる場合、奥様が日本人であれば"技術・人文知識・国際業務"の一般就労をはじめ、日本人配偶者の在留資格という選択肢もありますし、条件によっては高度専門職の資格も可能です。一般就労は申請から取得まで短期間で行え、日本人配偶者の資格なら就労制限がないなど、それぞれにメリットがあります。ご本人の希望と企業さまの意向を踏まえて、適正な在留資格を選び、取得すること。そしてそれを正確に素早く行うこと。それが私たちの仕事だと思っています。

編集部

単なる代行業務で終わらず、取得後に企業や社員が気持ちよく働き、関係を続けられることも心がけているわけですね。申請代行をどこに依頼するか、その選択のしかた次第で、企業も社員本人も、満足感に大きな差が出そうですね。本日はありがとうございました。

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