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【前編】購買力補償方式の基礎知識とAIRINCデータの特徴

2019.02.05

海外に社員を派遣する際、人事担当者にとって大きな悩みとなるのが、海外赴任者の海外給与をどのように決定すれば良いかということ。そこで注目されているのが「購買力補償方式」だ。欧米のグローバル企業ではすでに1960年代から普及がはじまり、近年では日本の大手企業での採用も活発になっている。

「購買力補償方式」とは、どんなものなのか?そのメリットとは?海外駐在員処遇のスペシャリストである(株)リロ・エクセルインターナショナルのシニアコンサルタント/瀧川輝政さんにうかがった。(全3回)

そもそも「購買力補償方式」とはどんなものなのでしょうか

海外駐在員の給与を決めるための方式のひとつです。

簡単に説明しますと、勤務国(都市)での給与を、本国にいたときと同じ生活水準を保てるように設定するための「ものさし」のようなものと言えるでしょう。

例えて言えば、もしも赴任先の物価が日本の2倍だったとすると、給与額が同じままでは、買える物の量は日本にいるときの半分になってしまいますよね。つまり、日本での生活水準が赴任先で維持できなくなるわけです。そうした不公平感をなくすためには、赴任先の物価差などを考慮して給与を決めることが必要です。それを実現するのが「購買力補償方式」と呼ばれる処遇方式です。

おおむね、1年~5年程度の駐在を前提としており、赴任中は本国と任地の差を補償し、駐在期間を終えて日本に戻ってきたあとも、本国での生活水準に円滑に戻りやすい状況をつくれます。

海外の拠点が多い企業なら、拠点間のバランスを取ることにも役立ちますね。とはいえ、企業の人事部で赴任先の物価調査をするというのは、時間も手間もかかります。海外拠点の多い国ならなおさらですし、現実的ではないと思いますが?

自社で調査するというのは、時間や労力の問題だけでなく、客観性も担保できませんよね。

もしもそれを活用して給与が下がってしまった場合、駐在員から「下げるために都合のよい調査をしたんじゃないか?」と思われかねません。また、海外に実際に赴任した自社の社員へのアンケートという形で物価調査を行う方法もありますが、それはそれで、駐在員サイドの視点に偏ったデータになりかねません。こうしたさまざまな理由から、購買力補償方式を採用している企業のほとんどが、外部のデータ会社からデータを購入しています。

なるほど、第三者の客観的データというわけですね。ちなみに「購買力補償方式」以外にも給与設定の方法はあるのでしょうか?

主なものとしては「別建て方式」と「併用方式」があります。

「別建て方式」は、国内勤務時の給与とは別に、駐在都市および駐在中の職責や年齢などに基づいて外貨給与を設定するものです。たとえば家族を日本に残して単身赴任する駐在員の場合なら、海外での基本給や諸手当を外貨で支給し、留守宅手当なるものを円貨で支給する仕組みです。

しかしながら外貨で支給する分については「他社の動向を見て自社はその○○%にしよう」といった、いささか曖昧に決められているケースが多いような気がします。曖昧ですから、ある意味で簡単に決められるとも言える一方、客観的根拠は乏しくなりがちです。

併用方式についても教えていただけますか。

日本での勤務時の基本給をそのままスライドして海外基本給を決定し、そこに海外赴任に関する諸手当を加算するという方法です。企業によって異なりますが、まずは日本での基本給と同額をベースに、手当要素を加味する場合には1.2~1.5倍といったかたちで給与の総額を設定し、その中で円貨と外貨で支給する額を振り分けるといったやり方が多いようですね。

決定する基準が多くの場合日本円ですので為替の影響を受けやすく、人件費の負担を本社と現地でどのように振り分けるのかといった国際税務上のリスクが生じやすいなどの課題があります。

併用方式は、海外拠点がひとつならいいかもしれませんが、拠点が多くなると、拠点間のバランスを取るのが難しくなりそうですね。

複数の拠点間の格差が生じるのを防げるのも、購買力補償方式のメリットです。

これもまた、グローバルな事業展開をする企業が購買力補償方式を支持している理由になっています。本国と任地の「差」を補償する考え方に依るため、客観的であり、なおかつ国際性、合理性、公平性が担保できる購買力補償方式は、日本の企業での採用も多くなっています。現在では海外駐在員を派遣する日本企業の約7割が購買力補償方式を採用しています。

多くのメリットがある購買力補償方式ですが、デメリットについても教えていただけますか?

物価差の調査データを購入するためのコストがかかるということですね。

ですが、このコストを支出することで、人事部の労力は大きく軽減されますし、さらには客観性も担保されることになりますから、費用対効果の高さを実感している企業も多いと思います。

多くの企業が採用しているのは、その証と言えますね。

1950年代以降の米国系企業の潮流を振り返ると、購買力補償方式が支持されてきた理由も見えてきます。

まず50年代には欧州を中心とした製造業投資の拡大がはじまります。それを背景に60年代には購買力補償方式を採用する企業が増え始めます。70年代は海外直接投資の増加にともなう産業の空洞化が表れ、80年代になると駐在員給与のスリム化が進みます。90年代は三国間移動が増加し、2000年代に入ると現地化の加速や処遇の複線化などが一段と進みます。

客観的な根拠にもとづいて給与処遇の適正化が図れる購買力補償方式は、それぞれの時代の課題に常に応え続けてきたと言えるでしょう。こうした流れを追うように、日本でも1990年代から採用する企業が増え始めました。

日本企業の海外赴任に対する考え方も、この30年で大きく変化したように思えます。

そうですね。情報も経験も少なかった時代の海外赴任は、相当な覚悟を持って臨むことが必要だったと思います。企業としても、「お願いなので、海外赴任してください。」という気持ちが強かった。その分、給与の処遇なども非常に手厚くて、かつては海外赴任すれば、その給与で家が建てられると言われるほどでした。

けれど、現在ではインターネットなどの普及も目覚ましく、赴任中の社員が日本に残してきた家族とテレビ電話などで簡単につながることもできます。心理的には日本と海外の距離がぐっと近くなり、赴任時の精神的な負担もずっと少なくなりました。送り出す企業側でも、以前のような手厚い処遇は見直したいと考えますよね。購買力補償方式によって、客観的なデータにもとづいた適正化は、社員にとっても理解されやすい仕組みだと思います。加えて、基本的な給与を適正化することで余剰分が生まれれば、それを他の手当に充当したり、福利厚生面を総合的に充実させることができれば、より受け入れられやすいものになると言えるでしょう。

編集部:そういったメリットもあるわけですね。

第2回では、購買力補償方式について、さらに詳しいお話をうかがいたいと思います。

【続きはこちらから】購買力補償方式の基礎知識とAIRINCデータの特徴

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