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【中編】購買力補償方式の基礎知識とAIRINCデータの特徴

2019.02.07

海外に社員を派遣する際、人事担当者にとって大きな悩みとなるのが、海外赴任者の海外給与をどのように決定すれば良いかということ。そこで注目されているのが「購買力補償方式」だ。欧米のグローバル企業ではすでに1960年代から普及がはじまり、近年では日本の大手企業での採用も活発になっている。

「購買力補償方式」とは、どんなものなのか?そのメリットとは?海外駐在員処遇のスペシャリストである(株)リロ・エクセルインターナショナルのシニアコンサルタント/瀧川輝政さんにうかがった。(全3回)

購買力補償方式のしくみについて、詳しく教えていただけますか。

基本となるのは、「No Loss, No Gain」という考え方です。

つまり、海外駐在員が赴任することで経済的な損失を被ったり、国内勤務者が不公平感を抱いてしまうような利益を生じさせたりしないという考え方ですね。海外給与の具体的な決め方として、まずベースになるのは、赴任直前の本国での年収です。それを使途によって、「税金」と「住宅費」、日々の暮らしのための「生計費」、そしてこの3つのどれにも含まれない「貯蓄・その他」の4つに分けます。このうち「税金」「住宅費」「生計費」の3つについて本国と任地での差額を会社が補償するのです。

その3つについて差額を補償する理由は?

まず税金ですが、これは国によって税制や税率が違うためです。駐在中の納税は居住国で課税されるのが原則ですから、仮に現地で税込で給与を支給したとしましょう。そうすると、赴任する国によって手取り額が変わってしまいます。つまりGainやLossが生じるわけです。

そこで購買力補償方式では、駐在先での税金は基本的に会社が負担し、ただし、日本にいたときに納めていた所得税や住民税相当額については、本国社員と同様に駐在員にも自己負担してもらいます。この結果、いわば、会社が実質的な差額を負担することで、No Loss, No Gainを実現するわけです。

住宅費についてはいかがでしょうか?

任地での住宅費は、ある程度ガイドラインを決めたうえで会社が負担したり、手当として払ったりするのが一般的です。

けれど、もしも日本国内での転勤なら、社宅が用意されていて、社宅使用料を社員が自己負担するというケースが多いですよね。なのに、海外では会社が全額負担となってしまうと、国内外での不公平感が生まれます。

それを是正するため、バランスをとる、という考え方から、購買力補償方式では、その社員が日本国内で支払っていただろう社宅費相当額などについては自己負担してもらい、残りの差額を会社が補償することで、公平性を維持します。一方で、日本国内で社宅制度がないという企業もありますから、その場合には総務省が発表している住宅費の平均支出額のデータなどを活用して自己負担額を決めるというバリエーションも用意しています。

国内外だけでなく、海外の拠点間の公平性も維持できますね。では「生計費」はいかがでしょうか。

ここで重視されるのが物価差です。

生計費に関しては、データ会社によって考え方や取り組みが違うことが少なくないので、ここでは我々「リログループ」の米国関連会社であるAIRINC社の場合でお話します。先述したように、国によって物価は異なりますから、その物価差を会社が負担して、赴任先でも本国同様の生活水準を維持できるようにしようというのが購買力補償方式です。

AIRINC社では、総務省統計局が発行している「全国消費実態調査」で対象となっている品目「モノ・サービス」のうち、「家庭食品」や「衣類」、「外食」、「レクリエーション・娯楽」、「医療」、「交通機関」、「人的サービス」をはじめとした12のカテゴリーについて、370品目の価格調査を行っています。これら品目について海外の各都市でも調査を行い、本国と任地のデータを比較した「生計費指数」という基礎データを算出します。この生計費指数と為替レートを本国での支出実態である標準生計費にかけあわせることで、国内勤務時の生活水準を維持した任地での生計費が算出できるわけです。

データ会社によって違いがあるとおっしゃいましたが、AIRINCは何が違うのでしょう?

物価調査の品目数もそのひとつですね。一般的なデータ会社では180程度ですが、AIRINC社では370品目の調査を行います。品目の選び方にも特長があります。たとえば「家庭食品」については、日本の企業向けに、味噌やお米など、日本人にとって切り離せない食品も可能な限り数多く調査しています。しかもお米については、長粒米でなく、日本人が好む短粒米に重きをおいてデータに反映させています。

日本人の海外駐在員の実態により即したデータと言えますね。

実態に即したという点では、医療費の支出に関する捉え方にも、独自の特長があります。

たとえば日本国内で風邪をひいて医院で3千円払ったとします。日本では3割の自己負担ですから、本当の医療費そのものは1万円ですね。1万円はいわばこの場合の医療費の総額と言えます。他のデータ会社では、この総額について、日本と任地での比較を行っています。ですが、海外では派遣する企業が医療保険をかけていることも多く、実際に駐在員が自己負担することはほとんどないと考えられます。AIRINC社では、総額ではなく、実際に駐在員が自己負担する額を前提とした比較したデータを作っているんです。

総額の比較による給与処遇は、実際には負担していない額が駐在員の余剰利益になってしまいますから、むしろ国内外での不公平感を助長してしまっている気がします。

仰るとおりです。

きめ細かくて、海外駐在員の清潔実態に即していることは、AIRINC社のデータの大きな特長のひとつです。

続く第3回では、人事部の現場での悩みも交えながら、海外給与での大事な要素のひとつとなるインセンティブについてもうかがいます。

【次回のコンテンツ】リンク:【後編】購買力補償方式の基礎知識とAIRINCデータの特徴

【前回のコンテンツ】リンク:【前編】購買力補償方式の基礎知識とAIRINCデータの特徴

【関連コンテンツ】リンク:三菱ガス化学株式会社様│AIRINCデータを活用した購買力補償方式の導入シナリオ

【関連コンテンツ】リンク:AIRINCデータによる公平な駐在員福利厚生制度の策定


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