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GLOBAL MOBILITY CONSULTING
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「戦略的」なグローバル・モビリティ・プログラムとは

2019.03.05

「戦略的」なグローバル・モビリティ・プログラムとは
AIRINC(Associates for International Research, Inc.)│社長兼CEO/スティーブ・ブリンク

御社では「戦略的」なグローバル・モビリティ(国際間人事異動)プログラムを運営されていますか?

グローバル・モビリティを戦略的に推進するというのはどういうことでしょうか?

御社のプログラムが戦略的かどうかは重要なのでしょうか?

こうしたトピックに関する最近の議論を踏まえ、AIRINCが考える戦略的なグローバル・モビリティ・プログラムの要件をご説明いたします。

端的に表現すると、戦略的なグローバル・モビリティ・プログラムとは、企業独自の経営戦略に沿って事業目標の達成に貢献するプログラムのことを指します。本来、これがあらゆるグローバル・モビリティ・プログラムの原点になるべきですが、私たちの認識では、多くのプログラムでは自社の事業目標に必ずしもそぐわない時代遅れの手続きにこだわる傾向があるようです。新たな人材基盤が生まれ、採用に有利な報酬のあり方が変わりつつあるグローバルな職場環境では、かつては事業に貢献していたグローバル・モビリティ・プログラムが時流に取り残されてしまうことも珍しくありません。

昨今のモビリティ・プログラムは、海外赴任をサポートするだけではなく、グローバルな人材の開発も推進しなければなりません。ビジネスを成功させるにはグローバルな人材の確保がきわめて重要になってきているため、戦略的なプログラムでは新たなプロセスを取り入れ、進捗状況や達成度の評価に必要な洞察を深めることになります。

求められる進化

マッキンゼーが戦略的な経営課題や企業業績を左右する重要な要素として「ウォー・フォー・タレント(人材獲得・育成競争)」に着目した画期的な調査を実施してから20年あまりが経ちました。最近では、2014年4月にマッキンゼー・アンド・カンパニーから出版された『Global Flows in a digital age』(以下を参照)にグローバリゼーションの段階が記載されています。


ビジネスリーダーは新興市場への投資を強化するだけでなく、世界経済における新興国の役割が歴史的な転換を遂げていることも理解する必要があります。グローバリゼーションの第一波では、途上国がまず日用品や原材料を供給し、やがてグローバルなサプライチェーン向けの安価な労働力の豊富な供給源になりました。

現在(第二波)のグローバリゼーションでは、新興国から続々と新規顧客が生まれていますが、まもなくデジタル技術に後押しされた第三波がやってきます。これからの時代は、新興国がますます新たな人材、イノベーション、競争、そしてパートナーシップの源になるでしょう。企業各社はしかるべき人材、サプライヤー、イノベーションを世界規模で探す必要がありますし、その大部分は新興市場で見つかるのではないでしょうか。もはや、コストだけを基準にして、探す先を決めることはできません。
引用:『Global Flows in a digital age』(マッキンゼー・アンド・カンパニー│2014年4月)

新市場の開拓は、企業の成長戦略における重要な要素の一つですが、その機会を存分に活かすための経営能力や経験を備えた人材を見つけるのは大変です。人材の獲得競争やグローバルな労働人口の変化に直面している企業各社は、適材適所を適時に実現できるよう、人事戦略の見直しを迫られています。真にグローバルな人材が育っているものの、必要とされる場所に存在しているとは限らないため、こうした人材の対価や採用過程の競合状況は地域や環境によって大きく異なります。

よって、ビジネスを成功させるには重要な人材の流動性を高めることが今後も不可欠であり、人材の需給ギャップを埋めるために役立つシステムやプロセスがこれまで以上に必要となるでしょう。はたして御社のシステムやプロセスは、経営目標の実現に必要な人材を採用し、定着させるうえで効果を発揮するでしょうか?

AIRINCの戦略的モビリティ・ロードマップ(SMR)

AIRINCが描く戦略的モビリティ・ロードマップ(SMR)では、モビリティに関する限定的な目標や期待を踏まえた表面的かつ実務的なアプローチから、各種目標を業績に応じて最適化する野心的かつ戦略的なアプローチへの移行段階を図解。「コンプライアンス」から「オペレーショナル・エクセレンス」、「人材と報酬の一元管理」、そして「目標達成度の評価」へと進みます。

グローバル・モビリティ・プログラムの多くは、「コンプライアンス」と「オペレーショナル・エクセレンス」に重きを置いています。「コンプライアンス」では、イミグレーション関連のコンプライアンスや適正な税務管理を徹底することでリスクの緩和を図ります。「オペレーショナル・エクセレンス」では、アウトソーシングによるワークフロー・プロセスの効率化、複雑な国際人事を管理するテクノロジーの導入によって、サービス提供の仕組みを整備します。この2つの段階は生来、戦略的というより実務的であり戦術的です(重要性が劣るというわけではありませんが、モビリティ機能が最初に定義された段階で要件はほとんど決まっています)。一方、戦略的モビリティ・ロードマップの過程では、戦略的投資を伴う3つの主な段階「経営戦略との整合性」「人材と報酬の一元管理」「目標達成度の評価」を重視します。

戦略的モビリティ・ロードマップ

戦略的モビリティ・ロードマップ(SMR)

【左図日本語訳】

縦軸:Strategic/戦略的│Nature of Activity/行動の本質│Tactical/実務的

横軸:Transformation of the Global Mobility Function/グローバル・モビリティ機能の進化

グラフエリアの説明:

Compliance/コンプライアンス

Operational Excellence/オペレーショナル・エクセレンス

Value Alignment/経営戦略との整合性

Talent and Reward Integration/人材と報酬の一元管理

Measurement of Goal Achievement/目標達成度の評価

経営戦略との整合性

経営戦略との整合性とは、企業の経営戦略を理解し、その戦略に応じて適正なガバナンスやワークフローを整備することです。

経営戦略との整合性はモビリティ・プログラムの基本であるべきですが、後付けになってしまうこともあります。そうなる原因の多くは、モビリティの実務担当者が目先のニーズしか考えていないからではなく、担当者の指針となる事業計画が明文化されていないためです。企業の事業計画や人材市場の進化にモビリティ・プログラムが対応できていないケースも少なくありません。こうした進化に応じてプログラムを整備するには、社内のモビリティ関係者がたえず情報を提供し、グローバルな人材プールの動向(プログラムで採用したツールや手法に影響を与える要素)を把握しておく必要があります。なお、ここでいうモビリティ関係者には、人材管理/報酬/福利厚生/税務/法務/採用/採用/事業ライン等の各部門が含まれます。

人材プールの動向は、モビリティ部門が近年策定している各種規程にも反映されています。多くの企業が大規模で多面的なグローバル・モビリティ・プログラムに対応する規程が一つだけでは不十分だと考え、複雑な状況に対処するための規程をいくつも整備しています。以前は全ての海外駐在員に対して統一した制度を適用することが海外赴任の基本でしたが、昨今は赴任の理由や期間によっては、統一化した制度を維持するアプローチを採用すべき場合とそうでない場合があり、状況によっては、任地の報酬基準を取り入れた形式のほうが好ましいこともあります。

赴任タイプはその理由(ガバナンス、知識の移転、研修など)や期間(短期出張、通勤、転籍など)によって異なり、企業にもたらす価値や必要なコストも赴任タイプによって違います。そのため、画一的なアプローチでは赴任費用をかけ過ぎたり、抑え過ぎたりするおそれがあります。このようにAIRINCでは海外赴任にさまざまなタイプがあることを認識しているため、その違いに対応できるよう多様なデータやソリューションをご用意しています。

FITsm

グローバル・モビリティ・プログラムと経営戦略との整合性を確保するには、関係者からの情報をもとに明文化した事業目標と、モビリティ・プログラムを実行するための実用的な仕組みを明確に定めた報酬指針が必要です。

AIRINCは企業のモビリティ・プロファイルを把握し、最適なモビリティ・プログラム・ソリューションを導き出す独自の手法FIT(SM)│【Focus-集中-、Interpret-解釈-、Tailor-調整-の略】を開発しました。この手法では、企業独自のモビリティ・プロファイルを見極めるうえで重要な7つの要素(人員構成、組織体制、報酬戦略、業界動向、総合的な企業戦略、リソース、人材戦略)を評価します。FIT(SM)を利用すれば、自社の事業目標が明確になり、その目標に応じた戦略的なモビリティ・プログラムで付加価値を生み出すことができます。

人材と報酬の一元管理

人材と報酬の一元管理とは、自社の将来的な経営ニーズに応じた人材プールを整備するための手段としてモビリティを活用することです。

多くの企業の上層部からは、グローバルな人材プールの整備が最大の課題だという声が聞かれます。グローバル市場では事業を拡大する絶好のチャンスが生まれる一方で、人材プールにおける重大なギャップも顕在化してきました。特に、国際的な経験やノウハウを備えたマネージャークラスの需給と供給には深刻なミスマッチが見られます。従来のモビリティは短期的な需給ギャップの解決に役立てるものでしたが、いまや海外赴任はグローバルなリーダーシップ育成プログラムの重要な側面になっています。大手多国籍企業のなかにも、幹部候補生が経営陣に加わるには複数の地域で要職を経験しなければならないという方針を最近明らかにしたところがいくつもあります。AIRINCの最新調査では、最大手多国籍企業の経営トップ100人のうち約30%が外国人か、または海外に駐在していることが判明しましたが、これも驚くにはあたりません。

こうした事実はモビリティ担当部門に重要な疑問を投げ掛けています。優れたモビリティ・プログラムを活かしてグローバルな人材の需給ギャップを埋める方法は? 海外駐在員の報酬水準と現地の報酬体系をどちらも評価できる手法は? 職位ではなく地域性や現地の要求に対応した報酬の適正な水準は? 今のところ、この種の報酬の評価は世界中の拠点で個別に行われています。報酬を評価するための再現可能で一貫したプロセスが整備されていないため、相対的に競争力のある報酬を巡って問題が生じているのも無理はありません。

モビリティを体系的に評価するプロセスを整備すれば、人材の採用や定着だけでなく、財務業績の改善にもつながります。AIRINCの費用見積ツール(ACE)やアフィニティ・マトリックスは、赴任時に競争力のある報酬案を見極めるための洞察を深めることで、人材の流動性向上に役立ちます(例えば、東京で働くアメリカ人の報酬パッケージは米国の報酬体系、日本の報酬体系、それともグローバルなハイブリッド体系に連動させるべきでしょうか?)。

モビリティ担当部門がAIRINCのボーダーレス100報酬データベースを利用すれば、自社にとって最も重要な従業員の報酬パッケージ全般(固定給、短期的インセンティブ、長期的インセンティブ、赴任手当、福利厚生)を精査することで、競争力を評価できます。経営幹部における海外駐在員の割合が増えているにもかかわらず、ほとんどの報酬調査では彼らを除外しています。ボーダーレス100報酬データベースは、経営幹部に占める割合が拡大するなかで海外駐在員の報酬がもたらす影響を評価するための重要なツールです。

目標達成度の評価

目標達成度の評価とは、具体的(かつ戦略的)な目標に対する有効性を評価するために、モビリティ・プログラムをモニタリングすることです。

御社のモビリティ・プログラムにはどのような目標がありますか? 戦略的モビリティ・ロードマップでどの段階を目指しますか? 関係者が情報を提供し、それぞれの目標を設定していますか? その目標は行動計画と連動していますか? 以下を希望していますか?

  • モビリティ関連経費の削減 
  • 赴任過程の満足度向上
  • 新興市場や課題の多い市場での事業拡大
  • 全般的な人材不足への対処
  • 一貫した報酬体系の整備
  • 人材獲得競争における成功率の向上
  • 業績向上に向けた海外赴任要員の多様性拡大

こうした目標や、他のさまざまな目標のなかには、相反するように見えるものもあります。例えば、モビリティ関連コストを削減しながら、人材不足に対処するのは至難の業です。もちろん、両立することは可能ですが、取り組みがうまくいっているかどうかを評価する際には、この2つが相反する目標であることを認識しておくことも大切です。

私たちは、企業各社がAIRINCのモビリティ・メトリックス(SM)ソリューションを利用して自社のモビリティ目標を統合、監視、評価できるようサポートしてきました。このソリューションはグローバル・モビリティに特化した、当社独自の労働力分析手法です。モビリティ・メトリックス(SM)を活用すれば、適切なプログラムデータを収集・評価して、所定の目標に向けた進捗状況を追跡管理することができます。進捗状況を定期的にモニタリングしておけば、計画の微調整や目標の修正も可能です。

今日のグローバルな労働市場はほぼ毎日のように変化しています。途上国から新たな人材プールが生まれ、高報酬のオファーが急速に集中しています。戦略的なモビリティ・プログラムを整備すれば、グローバルな労働市場の変化を踏まえて目標の妥当性を常時モニタリングすることで、ビジネスに多大な付加価値をもたらすことができます。

結論

手続きを中心としたオペレーションから戦略的な取り組みへとモビリティ・プログラムを進化させるには、関係者からの情報を取り入れる必要があります。人材、報酬、福利厚生、税務、法務、採用、そして各事業部門の人事に関する具体的なニーズを把握しなければ、各関係者の目標達成に役立つ計画は策定できません。世界に通用する幹部候補生に加えて、臨機応変で流動性に富んだグローバルな報酬体系が求められている昨今、モビリティ・プログラムにできることは少なくありません。AIRINCが持つ多様なグローバル・モビリティ関連データや、体系的なソリューション提供実績に基づき開発されたツールやサービスを活用することで、グローバルな人材プールと各国の報酬制度を合理的に連動することが可能となります。

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STEVE BRINK│【AIRINC】PRESIDENT AND CHIEF EXECUTIVE OFFICER

スティーブ・ブリンクは2008年後半に入社し、商品開発の最適化や組織横断的なプロセスの効率化、営業機能の強化を通じてAIRINCの新たなビジョンや成長戦略を推進しています。AIRINCに入社する前はマーサー社でグローバル・リーダー兼ワールドワイド・パートナーを務め、同社の情報・ソフトウェア事業を統括していました。スイスのジュネーブを拠点に、世界各国で要職を歴任してきた実績もあります。国際人事の諸問題や動向に関して講演する機会も少なくありません。

マーサー社で14年間勤務する前は、タワーズ・ペリンでオペレーションズ・マネージャーとして人事ソフトウェア・ツールやグローバルな職務評価システムを担当していました。1990年から、WorldatWorkという団体で定量分析コースの講師も務めています。テキサス大学オースティン校で経済学の学士号、北テキサス大学で経済学の修士号を取得しています。

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