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【 ローカルプラス導入の秘訣】ローカルプラスの計算ツールとローカルプラス導入のトレンド

2019.05.13

ローカルプラス導入の秘訣

企業は常に、海外赴任を管理するための革新的で経済的、かつ管理工数が少ない方法を模索し続けています。こうしたトレンドを裏付けているのが、グローバルモビリティを取り巻く現在の状況です。人事担当者は現状、従来型のバランスシートアプローチ、短期型アプローチ、通勤者向けアプローチ、ネットサラリーパッケージ、ホストプラスアプローチなど多くの選択肢の中から処遇方法を選ぶことになります。

ローカルプラス(ホストプラス)報酬パッケージは、金融業界や高度専門サービス業界ですでに10年以上の実績があり、モビリティ分野において目新しい制度ではありません。最近では、従来型のバランスシートアプローチの代わりとなる低コストを実現できる報酬アプローチとして期待され、多くの関心が集まっています。適切な状況下で使用すれば、海外駐在員への報酬の支払いにおいて効果的かつ有効なシステムとなります。いつどのように使用するのが最善なのかを理解することがローカルプラスの導入を成功させるカギです。

市場のトレンド

2011年にAIRINCが行ったMobility Outlook Surveyによると、企業が採用するポリシーの種類は多岐にわたることが明らかになりました。バランスシートアプローチ(84%)、短期派遣(74%)、ローカル化(46%)といった従来型の方針を採用していると答えた企業がほぼ過半数にのぼり、ローカルプラスを現在の報酬方針として採用していると答えた企業は4分の1でした。ローカルプラスを採用している企業では、この方針により報酬が支払われている赴任者の数は全体の約3分の1であることが判明しました。

また、業界で見ると上記のとおり、金融関連企業や高度専門サービス関連企業ではローカルプラスを採用する傾向が非常に強く、同パッケージが適用されている赴任者の割合も高いことが確認されました。

業界のトレンドに加えて、地域的なパターンも存在します。調査データによると、アジア太平洋地域に拠点を置く企業はローカルプラスを正式採用する傾向が非常に強く、ローカルプラスが報酬方針として適用されている赴任者の割合が比較的高いことが分かりました。さらに、今後12か月以内にローカルプラス導入を検討している企業も非常に多いことが調査から判明しています。全体としては、今後12か月以内にホストプラス導入を検討していると答えた企業は21%にのぼります。

policies

図:今後12か月以内の導入を検討している正式な報酬方針

Percent of Respondents:回答者の割合

Formal Policies:正式な報酬方針

Reduced Balance Sheet:"ライト版"バランスシートアプローチ

Host Plus:ホストプラス

Host(no Plus):ホスト(プラスなし)

Net Salary Package:ネットサラリーパッケージ

Short Term:短期派遣

Commuter:コミューター

Mid-term/Project-Based:中期型/プロジェクトベース

Rotators:ローテーター

Localization:ローカル化

Localization Plus:ローカル化プラス

ローカルプラスパッケージが最も一般的に使用されるのは、赴任者を送り出す国(本国)と受け入れる国(ホスト国)の間の給与水準、生活水準、経済状況が類似する場合です。金融関連企業や高度専門サービス関連企業がローカルプラスの運用にこれまで成功してきた理由はこのような背景によるものです。こうした企業の場合、赴任先が先進国になることが多く、赴任者の本国での給与水準も高い傾向があります。

しかしながらこの傾向は、ローカルプラスに関する潜在的な懸念も浮き彫りにします。それは、あらゆる状況において、特に類似度が低い(例えば、高賃金の国から低賃金の国への赴任、または先進国から開発途上国への赴任)場合、ローカルプラスが適切なソリューションとは必ずしも言えないということです。

そのため、ローカルプラスは、低賃金の国、開発途上国、経済的に困窮している国に赴任するケースに採用される可能性は低くなります。こうした懸念に加えて、赴任先から本国に戻る際の様々な課題、年金のポータビリティ、給与体系、コンプライアンスの問題などもローカルプラスを実行する前に真剣に検討する必要があります。

ローカルプラスパッケージの構成

企業独自の構成内容で設定できるローカルプラス報酬パッケージですが、その全体的なコンセプトはどの企業の場合もほぼ同じになります。基本的な構成要素となるのが、ローカルベースの給与またはホスト国通貨建ての給与(つまり、給与のレートが現地の基準に基づく)および加算増額される追加の手当(プラスコンポーネント)です。プラスコンポーネントには一般的に住宅、教育、交通費、一時帰国に関連したベネフィットが含まれ、その給付方法は、現金給付または現物給付のいずれかになると考えられます。

駐在員は通常、任地において実際の所得に課される全ての税金を支払う義務があります。報酬要素の多くはホスト国の通貨で提供されますが、最終的には本国に戻ってくる前提の派遣であるため多くの企業では、できるだけ赴任者を本国の年金制度や社会保障制度に加入させたままにしています。

ローカルプラスを採用する理由

海外赴任者に対する従来型の報酬パッケージ(バランスシートアプローチなど)にかかるコストは、彼らの基本給の4倍にものぼることが多いため、企業が別の手段を探しているとしても驚きはありません。状況によっては、ローカルプラスがモビリティ関連のコストを削減する効果的なアプローチになるかもしれません。

ローカルプラスがコスト低減に貢献できる要素は二つあります(いずれも、企業独自の方針によって異なります)。

一つ目の要素は租税に関するものです。海外赴任者に対する従来型の報酬パッケージを採用する企業の多くは税差額補償アプローチを実施しています。この方法の場合、従業員は基本給について本国にいたら支払うことになっていた税金を負担(仮説上の税金として雇用主により控除される)し、雇用主は、本国とホスト国の両方で査定された企業の源泉所得に対して実際にかかるすべての税金を支払います。

前述したように、ローカルプラスを採用した場合、従業員が実際の所得に課される全ての税金を支払います。雇用主は税金用のプラスコンポーネントをグロスアップした報酬を支払い、従業員がプラスコンポーネントの適切な手取り額を必ず受け取れるようにします(諸手当がグロスアップによってカバーされる範囲は、各社の構成によって異なる)。

ローカルプラスがコスト低減に貢献する二つ目の要素は、同パッケージを採用した企業の多くが、従来の長期派遣アプローチに通常含まれる諸手当に比べ、諸手当の種類を減らせる(例えば、物価差補償の加算分を外す)ということです。さらに、ローカルプラスの場合、支払われる諸手当の額は、従来型の報酬パッケージよりも低くなる傾向があります。

こうした理由のため、ローカルプラスは理論上、コスト低減につながる、従来型の報酬パッケージに取って代わるものになるはずです。ただし、実際にローカルプラスのコストが従来の長期型パッケージよりも低くなるかどうかは、本国・ホスト国の組み合わせと福利厚生プログラムの内容にもよります。

コスト低減による影響はローカルプラスの採用を推進する要因となりそうですが、報酬パッケージを主にホスト国の通貨で支払うメリットも注目すべき点です。例えば、過去16ヵ月の米ドルの動きに注目すると、米ドルは他の主要通貨の多くに対して、一部のケースでは変動率が2桁に達するなど、大幅に上下しています。

Dollars

図:米ドル/現地通貨の変動

Percentage Change:変動率(%)

Source:出典:www.oanda.com

USD/CHF:米ドル/スイスフラン

USD/JPY:米ドル/日本円

USD/GBP:米ドル/英ポンド

USD/EUR:米ドル/ユーロ

諸手当やプラスコンポーネントは多くの場合、ホスト国の通貨建てのみで提供されます。加えて、本国の生活水準を守るようには設計されていないため、為替相場の変動や本国・ホスト国のインフレ率などの変動要因に対する定期的な見直しはされません。

このため海外赴任者がホスト国において為替相場の影響を受けることは少なく、結果として、この点における人事部への質問や苦情も減ります。しかしながら、赴任者は、ホストプラスで報酬を受ける場合、為替相場の変動が、本国通貨での支出項目、または本国通貨での預金をまかなうために必要な現地通貨の金額に影響する可能性がある、という説明を受けている必要があります。

ローカルプラス報酬パッケージの計算方法

ローカルプラスについて考慮する理由は企業によって異なりますが、この報酬体系の採用が検討され、実際に採用される頻度は以前よりも高くなっています。しかしながら、バランスシートアプローチと違い、ローカルプラスには、人事担当者の支援を意図した計算ツールがほとんどありません。

多くの企業では人事担当者や現地の業務マネージャーは、ざっくりとした計算を行い、海外赴任者とは個別に合意交渉をしています。こうしたことは、支給体系の矛盾や予期せぬコストの発生につながる恐れがあります。

市場の需要とテクノロジーの間に存在する溝を埋めるために、AIRINCはローカルプラスカリキュレーター(LPC)を開発しました。このカリキュレーターは、ユーザー企業が、ローカルプラスタイプの報酬パッケージをシステム化し、構築したパッケージに対して一貫性と透明性を確立できるように支援することを意図したものです。この目的を実現するためにLPCを使用して正確かつ詳細な計算結果を素早く導き出すことができます。

ローカルプラスを構築する際には、どのようなプラスコンポーネントを支払うのかの判断を行う必要があり、この判断結果は各企業によって大きく異なります。LPC はこうした可変性にも対処しています。具体的には、一般的なプラスコンポーネントについての情報をAIRINCデータに事前入力してあり、ユーザーがこのデータを上書きすることができるようになっています。

また、追加入力できる項目数は無制限となっており、各プラスコンポーネントに対して支給タイプ(現金[グロス]、現金[ネット]、直接請求、払い戻しなど)を指定することもできます。LPCのツールは、海外赴任者への支給方法に基づいた要素の課税義務を評価する税制ロジックを内蔵しています。このため、個別の項目に関するグロスアップの有無をユーザーが指定できる柔軟性の高いツールとなっています。加えて、LPCプログラムの税制ロジックは、海外赴任者を本国の社会保障制度にとどめるか、米国納税責任を含めるか除外するかなど租税について十分に算定可能な精巧なものとなっています。

報酬パッケージが企業の方針に合わせてカスタマイズされ、特定の海外赴任者に対する変更が加えられると、LPCはその結果を次の2つの方法で表示します。(1)プラスコンポーネントへの税金のグロスアップ分を含めた、海外駐在員が受け取る額を確定・表示。(2)現金支給と、現物支給を含めたプラスコンポーネント、および給与額も含めた総額のグロス合アップを表示します。

まとめ

AIRINCが2011年にMobility Outlook Surveyを行った際、ある回答者が次のような推測をしています。

「採用した報酬プログラムの競争力を高く維持することに取り組むのと並行して、海外赴任に関する規程について従業員の理解を高め、例外事例や管理業務工数を減らし、各種コストを抑える。この目的をなしとげるために今後は、モビリティ関連のコミュニケーション強化にますます重点が置かれるだろう」。

ローカルプラスを採用する企業が増えている現在のトレンドが今後どのように進展するのかを判断するのは難しいですが、明らかなことは、企業が、全体的なコストの低減に加えて、国際的なモビリティパッケージを簡略化し、グローバル化する方法について今後も検討を続けていくということです。ローカルプラスは導入前に検討すべき重要な要素が複数あり、あらゆる状況に対して実行可能なソリューションというわけではないかもしれませんが、特定の状況下であれば効果的に活用できます。

海外赴任者への報酬支払いにローカルプラスを選択した企業の場合、重要なことは、報酬パッケージの構築に必要な方法と、パッケージについて海外赴任者へ説明するのに欠かせない手段を持ち合わせていることです。適切なリソースの準備ができていれば、ローカルプラスのような報酬プログラムを管理するための国際的に一貫した効率的なプロセスを確立できます。

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