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スペインにおける不動産購入の手引き

2020.02.10

はじめに│スペインの概要

スペインはヨーロッパ南西のイベリア半島に位置し、日本の1.3倍の国土面積、人口4,700万を有しています。

スペインはその長い歴史の中で多種多様な民族が融合してきたため、彩りの豊かな文化背景を持っており、飽きることなく旅人を楽しませてくれます。特にヨーロッパの中では珍しく何世紀にも亘ってイスラム教徒と共存してきたために、世界でも類を見ないユニークな文化遺産も多く、世界中の人々を惹きつけています。

スペインは世界第二位の観光客数を誇るだけではなく、2019年の世界移住希望国ランキングでは総合第4位に輝きました。特に「生活の質」「心身の健康」で1位、「友だちづくり」「コミュニティの文化度と受容性」などで3位と、明るい国民性や住みやすさが評価されています。地中海式ダイエットを取り入れた素材の美味しさを活かしたバラエティ豊かな食事、ラテン人特有のおおらかさなどで生活のクオリティが非常に高く、近年は日本に次ぐ長寿国としても有名です。

日本とは400年以上にわたる友好関係があることから、日本人にとってもいつも人気の高い国です。2018年には首都マドリードと成田間でイベリア航空の直行便が復活し、日本からのアクセスが大変便利になっています。また2020年春にはこの直行便が増便され、毎日運行される予定です。

スペインは欧州第5位の経済大国で、ユーロ圏19カ国の約10%の経済規模を有しています。リーマンショックで一時は落ち込んだものの2014年から経済は回復し、実質GDP(国内総生産)は23四半期連続のプラス成長(2015-2018年の平均成長率は3%以上)と順調で、今後もEU平均を上回る成長が予測されます。

地理的にも温暖な気候に恵まれ、年間300日以上が晴天です。このスペインの太陽を求めて、他のヨーロッパ諸国からも別荘の購入などの需要は高く、また政局・治安も安定していますので、将来的にも資産価値は落ちにくいと思われます。

このように他国にはない魅力溢れるスペインでの不動産購入を是非お勧めいたします。

スペインでの投資メリット

スペインでの投資のメリットは大きく以下にまとめられます。

1.ゴールデン・ビザで居住権を獲得

移住したい国として大人気のスペイン。スペインに住居を購入することによってその夢を叶え、しかもスペインをヨーロッパの入り口として欧州域内を自在に移動することができるのです。2019年現在、EU圏外の外国人であっても50万ユーロ以上の不動産投資をした場合には、複雑な手続きを簡略した「ゴールデン・ビザ」と呼ばれる居住許可を取得できます。これが、スペインの不動産購入に当たっての大きな魅力と言えるでしょう。

従来の居住許可書では年間183日以上の滞在が義務付けられていますが、「ゴールデン・ビザ」であれば年に一度スペインを訪れるだけで構いません。しかも、他のヨーロッパの国よりも少ない投資額で済むにも関わらず、シェンゲン協定を結んでいる欧州の国々であれば、どこへでも自由に行き来できるのです。さらなるメリットとして、不動産投資家ビザから取得できる居住許可証には労働をする権利が付与されていますので、直ぐに働き始めることができます。

居住権にこだわる必要がなければ、非居住者のままでの購入も、もちろん可能です。その場合には、50万ユーロ以上という金額の制限も関係ありません(50万ユーロ以上の不動産購入で「ゴールデン・ビザ」を取得できれば、合法的に1年間スペインに居住できるので、その後は投資物件を維持していることを条件に2年間有効な居住許可を更新して行くことが可能なのです。そして5年間が経過すると、5年毎に更新する長期居住許可証をもらうことができます。

法人名義で購入される場合には、過半数超の持ち株があるオーナーには居住許可が与えられ、個人であれば家族を呼び寄せることも可能なので、近年、ロシア、中国、ベネズエラなどからの投資が増えています。ただしこの投資誘致プロジェクトは、リーマンショック後に銀行の不良債権を救済する措置として2013年から導入されたため、景気が回復すれば急に廃止されることもあり得ます。申請手続きはどうぞお早めに)。

2.投資利回りの追及とキャピタルゲイン

スペインでは近年住居用賃貸価格が大幅に上昇しているのに対し、購入価格は2007年よりもまだ25~30%安ですので、購入後は賃貸に出して5%以上の高い利回りを得られると共に、将来売却した場合にキャピタルゲインも期待できます。

スペインの大都市の平米辺り単価は約5,000ユーロで、イギリスの24,000ユーロ/m2、フランスの13,000ユーロ/m2、イタリアやドイツの6,000ユーロ/m2と比べ、かなり割安です。2018年のスペイン都市中心部のグロス利回りは平均4.7%と、ヨーロッパ主要国イギリス3.9%、ドイツ3.6%、イタリア3.5%、フランス3.2%の利回りに対して高くなっています。

また、近年スペインでは観光客数が大きく増加しています。さらに、世界ビジネススクール・2019ランキングで8位のマドリードのIE、13位と18位のバルセロナのESADEとIESEには世界各国から学生が集まるほか、ヨーロッパ域内の大学の交換留学生 も多数受け入れられています。このことからも、中長期的にもマドリードやバルセロナといった大都市部の賃貸市場は安泰だと言えると思われます。

外国人がスペインで不動産購入を行う手順

1.納税者番号NIE/NIFの取得

非居住者であってもスペインの不動産購入にあたっては納税者番号NIF(Número de Identificación Fiscal)が必要であるため、購入者が外国籍である場合には、納税者番号も兼ねる外国人識別番号NIE(número de identificación de extranjero)、外国法人の場合にはNIFを予め取得している必要があります。これは必要不可欠な条件であり、これらの番号がなければ銀行口座開設もできません。

取得方法

経済投資だけが目的であれば、在外スペイン大使館の領事部に出向いて申請することも可能ですが、スペインに滞在して勉強したり働くことが目的であれば、現地の警察署を窓口としなくてはなりません。申請時には、本人のパスポートとその写しの提出が必要です。ご自身で直接申請できない場合には、公証人に委任状を作成してもらい、代理人にNIE申請の手続きを代行してもらう必要があります。

2.設立公正証書の法定訳

個人としてではなく、外国籍の法人が購入する場合には、在日スペイン大使館で会社の設立公正証書の法定訳を用意する必要があります。銀行口座の開設にもこの書類が必要となるので、会社の捺印とサイン権保持者の署名をしたものを3部ほど準備しておきます。

3.信頼できる代理人(弁護士)を確保すること

何度も現地スペインに足を運ぶことが困難でしたら、銀行口座の開設、電気・水などの契約手続き、税務上の書類の作成・所管轄への提出、更には物件の購入代金の支払いに至るまでの一連の手続きを、信頼できる人(弁護士など)に委任されることをお勧めします。代理人にお任せになる場合には、現地の公証人または在外スペイン大使館に依頼し、諸手続きを代行できるように権限移譲の委任状を作成します。

4.銀行口座の開設

不動産購入が目的であれば、外国人でも銀行口座を持つことができます。

銀行口座の開設は義務ではありませんが、資金の流れを明確にするために売買代金は銀行送金しなければなりませんので、非居住者であっても銀行口座を開設されることをお勧めします。こうしておけば、一旦自分自身の口座に資金を準備しておくことも可能です。また、ここから売買契約に絡む費用の精算したり、将来的には固定資産税や電気・ガス・水道などの公共料金を引き落とせるというメリットもあります。開設にあたっては、スペインの納税者番号NIF/NIEが必要となります。外国籍法人の場合には、会社の設立公正証書の法定訳をつけて、オリジナルと共にコピーを提出する必要があります。

5.物件調査と売買契約

売主との間で売買価格に合意がみられた暁には、物件に欠陥や問題がないか調査する必要があります。特に売主が物件に抱えている負債は購入者にかかってきてしまうため、事前に清算してあること(すること)を確認しなければなりません。 この時点で確認・取得しておくべき主な書類は以下の通りです。

A. 不動産登記情報証書(Nota Simple)

不動産購入にあたっては、売主が物件の所有者であることを証明する書類が必要となります。事前に不動産登記所(Registro de Propiedad)で登記情報証書(Nota Simple)を取り寄せ、正式な所有権者を確認すると共に、その物件が抵当や担保に入っていないかを調べておきます。

B. エネルギー効率証明書(Certificado energético)

住居のエネルギー効率を技術者が証明したもので、住宅の売買のみならず賃貸借契約を行う場合に売主・貸主に提出が義務づけられている書類です。事前に確認します。

C. 固定資産税(Impuesto sobre Bienes Inmuebles IBI)

物件所有者は年に一度、土地台帳評価額に応じて市町村税である固定資産税を支払う義務があります。法的には毎年1月1日の段階の所有者に課税されることになっているものの、売却時期によっては売主が買主にその年の所有期間に応じた負担を要求することも可能です。購入後に過去の固定資産税の未払い請求をされるリスクを回避するために、直近の納税証明書の提示を売主に要求されることをお勧めします。

D. 管理費

共同体の管理組合に属する住宅物件(建物内のアパートなど)を購入する際には、組合から管理費の滞納や債務がないことを証明してもらいます。また、各共同体により決まり事などが変わるため、事前に確認されることをお勧めします。

物件調査や上記の書類は、不動産売買の専門家や弁護士に確認されることをお勧めします。問題がなければ、公証人の前での本契約に先立って、私的な売買契約書を交わします。殆どの売買の場合では、この段階で予約金や手付金を支払うこととなりますので、やはり専門家に相談して内容を確認してもらう必要があります。

買主が手付金を支払った後に取引をキャンセルした場合、そのお金は戻りません。売主側が売買契約をキャンセルした場合には、受け取った額の2倍の金額を買主に払い戻すこととなります。

6.売買契約書の公正証書化

これまでの段階を踏んだ上で、最終的に公証人の立会いのもとに正式な売買契約を締結することになります。公証人の面前で売買代金の支払いを行い、売買契約を公正証書化します。公正証書作成にあたっては、売買当事者の身分証明書や場合により委任状のほか、すでに前項5に記載した書類などを提出する必要があります。不動産エージェントが介在した場合の仲介料の支払いもこの時に行われるのが一般的です。

7.購入後の税や費用の支払い

売買契約締結後は、公証人費用、不動産登記所費用などを精算し、30日以内に付加価値税あるいは資産譲渡税、法文書作成税などを支払います。購入後には毎年固定資産税(IBI)を支払い、確定申告をして、非居住者所得税や必要な場合には資産税(Impuesto sobre Patrimonio)を支払う義務がありますので、税務士への相談をお勧めします。

ちなみに賃貸収入にかかるEU圏外の非居住者の所得税は、一律24%となっています。

日本との二重課税状態を回避するために、両国間で「租税条約」が結ばれています。また、日本で確定申告の際は「外国税額控除」制度を利用して一定の金額を限度として、その年の日本国内の所得税から外国で得た所得税を差し引くという制度があるようですが、詳しくは専門家にお問い合わせください。

不動産購入の諸費用

通常、住居用物件購入において買主が負担を義務づけられている費用は、中古であってもローンの設立経費などを含めば、公正証書に記載された売買額の10%は必要だと言われています。ここで、住宅売買において買主が負担すべき義務費用(税金・公証人費用・不動産登記所費用など)を見てみます。

1.税金

住宅購入時に買主が負担する税金は、売買金額に応じる他に、スペインのどの自治州における物件かによって金額が異なります。また取得物件が新築か中古かによって、支払う税金の種類(付加価値税あるいは資産譲渡税)が変わってきます。

1.1. 新築(初譲渡)物件の場合:付加価値税(IVA)と法文書作成税(IAJD)

新築物件を購入する場合に一番大きな税金は付加価値税(IVA)となります。2019年時点では(6.5%のカナリア諸島を除き)全ての自治州で10%の課税となっています。つまり、500,000ユーロの新築物件を購入する場合には50,000ユーロの付加価値税が課税されます。付加価値税は売主に支払い、その納税義務は売主にあります。

付加価値税(IVA)の支払いが生じる新築物件購入の場合には、法文書作成税(Impuesto de Actos Jurídicos Documentados )も買主が負担します。この税金も各自治州によって税率が異なります。2019年現在、バスク0%、マドリード0.7%、カタルーニャ、バレンシア、アンダルシアなどにおいては1.5%となっています。

買主は売買契約締結日から30日以内にこの支払いを行う義務があります(法文書作成税は新築物件だけでなく、中古物件であっても銀行融資を受ける際はローンの公正証書の作成に課税されますが、この場合は銀行にその支払い義務があります)。

1.2. 中古物件の場合:資産譲渡税(ITP)

中古の場合に買主負担となる税金は、 資産譲渡税(Impuesto sobre las Transmisiones Patrimoniales)です。この税額も売買公正証書に記された売買額に応じるものの、自治州によって4%~ 10%と幅があります。2019年現在、その税額はバスクが4%で、その他の自治州は6%以上(マドリード6%、アンダルシア8%、カタルーニャやバレンシア10%など)となっています。買主は、売買契約締結日から30日以内に銀行でこの納税を行い、支払い証書を売買公正証書と共に税務局に提出します。

2.公証人費用

公証人への報酬は国の規定により、一定のサービスを提供した場合には、どの州のどの公証人でも同額(税別)です。住宅に関する売買公正証書の作成の場合には25%割引が適用されて、報酬額は300,000ユーロの物件で約1,000ユーロ、500,000ユーロであれば約1,150ユーロとなっています(参考リンク:Total transaction costs are moderate in Spain )。

3.不動産登記所費用

公証人に作成してもらった売買公正証書をもとに、不動産登記所に新たな所有者として登記する場合の料金も正規に定まっており、500,000ユーロの物件であれば600ユーロ前後(税別)になります。

以上1~3までが買主に支払いが義務がある費用で、以下4と5はオプションとなります(*銀行融資を受ける場合に買主に義務付けられる費用はここでは考慮しません)。

4.オプションとして:不動産エージェント・フィー

売主と直接売買をせずに不動産業者を通して紹介された物件を購入する場合には、通常、買主もエージェント・フィーを負担し、その額は一般的に売買金額の3%(税別)となっています。信用のおける不動産業者である場合、売買契約内容の作成・確認や契約に関する必要書類の準備など(「外国人がスペインで不動産購入を行う手順」の5及び6該当)のフォローが得られます。

5.オプションとして:代行業

不動産売買は提出書類も多く手続きも煩雑なため、買主がスペイン人の場合でも税の支払いや登記手続きには代行会社を利用するケースが多く見られます。

外国人が買主となる場合には、言葉の問題のほかに、手続きの都度現地まで足を運ぶことを避けるため、前章の「外国人がスペインで不動産購入を行う手順」における手続き1~4と7をカバーできる信頼のおける代理人(弁護士)の存在は欠かせません。その際、代理人(弁護士)報酬は売買額にもよりますが、1%(税別)程度の心積もりも必要かもしれません。

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