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【2018年】中国の医療事情レポート

2018.08.19

上海の医療事情について、日中友好医院様へお伺いしました

日中友好医院について

私共クリニックは、「外国人体格検査記録」の実施機関として中国赴任者の方々の健康診断を行っています。赴任予定者の方の中には慢性疾患を抱えたまま出発される方、まだ小さいお子様を帯同されて出発される方など、様々な方がいらっしゃいます。私共にも赴任前の健診だけでなく、赴任後の健康、医療に関するご相談が寄せられます。それにお応えするべく、中国現地の医療機関との連携を深めるため弊院スタッフは定期的に中国を訪問しています。


小児医療に課題が多い

この7月には上海の上海市児童医院、上海市精神衛生センターに伺いました。

 上海では急速な経済発展に伴い、医療に対する関心および要求も非常な高まりを見せています。その中でも小児医療の分野は多くの課題を抱えています。最近まで実施されていた一人っ子政策の影響で、1人の子供に計6人の大人(両親、二組の祖父母)が大変な愛情をもって関わりますので、対応する医療従事者には大きなプレッシャーがかかります。

  また、日本の医療現場と違い、患者は医師に対してかなり強い態度で接します。そのため小児科医の多くは非常にストレスフルな状況の中勤務しています。一人っ子政策の中止により今後出生数の増加が見込まれ、小児科医の数が圧倒的に足らなくなる事態が予想されています。 上記のような状況により、ただでさえ小児科医のなり手が少ない上の患者増ですから、この件に関しては政府も解決策を積極的に探っています。例えば、小児医療現場の大変さと小児科医の価値を啓蒙するためのテレビドラマの放映などもその一環です。

 また、精神医学領域でも増加するニーズに対応するために医療従事者はかなり苦労しています。現代的な生活様式と就業環境が浸透するのに伴い、精神医学領域のサポートを必要とする人の数は増加しています。しかし、少し前までの日本と同じ様に、中国では精神医学分野に関する世の中の理解はまだあまり進んでいません。そのため十全とは言えない環境の中で最善の医療を提供するために一方ならぬ努力が必要とされています。

深刻なのはマンパワーの不足

 専門分野を問わず中国の医療現場を見渡した際、共通して一番大きな問題と言えるのがマンパワーの不足です。現在、特に都市部では留学経験のある医療従事者も多く、たくさんの有能な人材が診療にあたっていますが、増え続ける患者に対して医療従事者の数が圧倒的に不足しています。多くの医師が一日に100人近くの患者の診察を行っています。その様な状況下で安定的に質の高い医療サービスを提供することはかなり困難と言わざるを得ません。日本からの赴任者が現地で医療を必要とする場合は、このような中国の医療状況に対する事前の理解が必要と思われます。また、安心して医療を受けるために、赴任前から渡航先の医療情報とご自身の健康情報をしっかり把握することをおすすめいたします。

 現地医療情報は先に赴任している方達の情報が一番正確だと思いますので、赴任前に是非連絡を取り合って下さい。都市部には外国人向けに展開している民間クリニックが数か所ありますので、ちょっとした体調不良の場合には受診のしやすさを考えてもそちらにかかるのが最善と思われます。ただ、担当医の離職、経営母体の変更などにより急に医療水準が変化してしまう場合もあります。また、企業内で医療機関情報のアップデートが行われていない場合もあります。海外で良い医療を受けるためには情報が命とも言えますので、縦横のネットワークを存分に活用していただきたいと思います。

受診する時、どのようなことに気を付けるべきか

 次に実際受診する際に一番重要なのは、ご自身の状態をご自身が正確に把握することです。海外で医療を受ける場合、日本と同じような医療環境を期待できないことがしばしばあります。中国の医療現場では検査機器も精度も随分レベルが高くなっていますが、地域や医療機関による格差がまだまだ存在します。医療サービスに対する考え方にも日中間ではかなりな違いがあるところに、言葉の問題が関わってきます。日本語利用可をうたっている医療機関も、あくまで中国の日本語が利用できる医療機関なのであり、日本の医療機関ではないとお考えいただいた方が受診した際のストレスが少なくすむと思います。

中国医療

ご自身の状況をできるだけ正確に理解する

その様な状況下で適切な医療を受けるためには、ご自身の状況をできるだけ正確かつ要点を押さえて相手に伝えることが非常に重要です。そのために慢性疾患をお持ちの方には、出発前に主治医と相談して治療経過が正確にわかる資料をまとめていただくことをおすすめしております。その場合は英語又は現地語での資料も作成しておくと安心です。既往歴によっては、万一の場合クリニックレベルでの対応では難しくなることも想定されますので、その時にはどこで、どうするか、ということもあらかじめ決めておかれた方が安全です。

お子様を帯同して赴任する場合は、念入りな準備が必要

 また、お子様を帯同される場合も事前の準備をしっかりなさるようにお願いしております。慢性疾患をお持ちの方へのお願いとほとんど重複しますが、治療経過のわかる書類に替えて発育経過のわかる資料、すなわち母子手帳を必ずお持ち下さい。日本国内で生活している分には母子手帳の未記入部分も大きな問題になりませんが、海外に行かれるにあたっては、記載できていない部分をある程度丁寧にご記入いただいた方が何かあった時に慌てずにすむと思います。また、母子手帳の外国語訳をご検討されることも一つの選択肢と考えます。

 海外赴任中には多くのストレスやトラブルがご赴任される方にのしかかってきます。少しでも負担を軽くするために、事前の準備と専門家への外注は非常に効果的な解決方法になります。 また、海外生活は視点を変えれば人生を豊かにする大きなチャンスでもあります。今まさに一つの国としての青春期にある中国は、多くの問題をはらみつつも魅力に満ちた場所にほかなりません。細心の準備はしつつ、時には大胆に中国生活をお楽しみ下さい。 何かお手伝いできることがございましたらいつでもご用命いただけますようお待ちいたしております。 一路平安!

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