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オーストラリア就労ビザ最新情報│研修ファンドが施行開始

2018.10.08

はじめに

アメリカ・トランプ政権発足以降、世界的に自国民保護主義の傾向が強まり、オーストラリアも「オーストラリア・ファースト」として2017年4月18日に突然ターンブル元首相が移民政策を翌日から改正したことで、日系企業も昨年から多大な影響を受け、多くの企業が翻弄される事態となりました。今までに経験のない1年がかりの「4段階」改正を受けて、2018年3月18日より今までの457ビザからTSS(482)ビザとしてあらたに就労ビザが施行されました。

この改正の最大のポイントは「オーストラリア国籍・永住者の雇用第一」主義として、海外からの人材は厳密に、中長期的か、短期的な職業として区別し、特に、短期的職業は労働市場において、一時的と認定し、永住ビザへの道が遮断されたことです。この効果により、実質海外からの人材は激減し、オーストラリア国籍・永住者へ雇用の機会が増加しました。さらにこの改正の最終ステージとして、「研修ファンド」(SAF: Skilling Australians Fund)の導入予定が昨年から発表されていましたが、ついに8月12日から施行となりました。この取り組みは他国の就労ビザには見られない独特の要件となりますので、解説したいと思います。

研修ファンドとは?

オーストラリア政府は、オーストラリア国籍・永住者若手人材の雇用を後押しする為、初期4年で15億ドルの研修ファンドを設立し、人材育成へあてる事を決定しました。この資金は教育省が管理し、分配していく予定です。ファンドの原資として、就労ビザ取得予定者=つまり海外からの人材を受け入れる企業(スポンサー)がこの費用(Levy)を負担し、政府が徴収するという要件を設定しました。その為、支払者はこの費用の恩恵を受ける権利はなく、考え方としては寄付に近い構図となります。

費用の負担額は?

ではどのくらいの費用を支払う必要があるのでしょうか。

【年間売上高】1,000万ドル以上 【年間費用】1,800ドル

【年間売上高】1,000万ドル以下 【年間費用】1,200ドル


スポンサー企業の売上規模に準じて、年間費用が異なります。オーストラリア就労ビザ申請手順は①スポンサーシップ(会社の審査)②ノミネーション(職種の審査)③ビザ(申請者の審査)と3段階ありますが、この研修ファンドは②ノミネーション申請時に、赴任予定期間分合計して、一括で支払いが必要となります。

元来、オーストラリアの申請料金は他国に比較してもかなり高額になっている為、現実として、赴任者1名派遣を検討する上でも、この法改正により大幅なコスト増になりました。 日系企業に多い職種事例として、現地法人の売上が1,000万ドル以上で、General Manager(中長期的な職業)を4年間派遣予定する場合、ビザ取得に関わる政府に支払う費用は以下となります。

スポンサーシップ:420ドル

ノミネーション:330ドル

研修ファンド:1,800x4年=7,200ドル

ビザ:2,455ドル

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【合 計】10,405ドル


経費のみでもかなり高額となる為、スポンサー企業としては人事戦略を再検討し、職種によってはローカライズ(現地採用)を検討する企業も少なくないと思います。まさにこれがオーストラリア政府の意図であり、自然にオーストラリア労働者を採用するような方向へ進むよう導いています。初予定していた4年の赴任期間より早く任務終了した場合も、Levyの返金はありませんので、より慎重な人事計画が必要となります。

おわりに

昨年からの度重なる改正の影響により、いまだ3月改正前の審査が遅延している事も大きな問題になっています。政府として新しいTSSは審査迅速化に必死ですが、取り残された457の審査遅延化は深刻であり、実務面においてはまだ気が抜けない状況が継続しております。

また、この研修ファンド施行直後8月24日にモリソン首相が誕生しました。2013年には移民・国境警備相も経験し、その時代に国境警備厳格化に積極姿勢だったことをふまえ、今後の移民政策も注視したいところです。

オーストラリアにとって日本は国への直接投資額がアメリカに次いで2番目と、非常に重要なビジネスパートナー国であり、2015年以来EPA(日豪経済連携協定)の効果はますます今後も広がっていくと 予測しています。まずは、この全く新しい研修ファンドの行く末を静観していきたいと思います。

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